第12話 裏切りの真相
涼介、香織、そして山田は、隠し通路を通り抜けて灯台にたどり着いた。三人は息を整え、次なる動きを考えるために一旦落ち着こうとしたが、どこかに不穏な空気が漂っていた。
「ここでしばらくは安全だろう。でも、奴らがいつまた襲ってくるかわからない。警戒を怠らないで。」涼介は緊張を解かないまま、灯台内部を確認しながら言った。
香織も灯台の中を見回し、安全を確保するための手順を考えていた。山田はその間にパソコンを取り出し、最後のデータ確認を行っていた。
「やっとここまで来たな…もう少しだ。」山田が低く呟いた。
その時、涼介が一つの違和感に気づいた。山田がパソコンの画面を操作する手つきが、どこか目的を持っているように見えたのだ。まるで、何かを隠しているかのように。
「山田さん、そのデータ、何を見ているんだ?」涼介は疑念を抱きながら問いかけた。
山田は一瞬動きを止めたが、すぐに冷静さを取り戻し、涼介を見返した。「確認しているだけだ。これ以上、彼らに手の内を見せないようにね。」
しかし、涼介の勘が告げていた。山田には何か隠しているものがあると。涼介はさらに問い詰めた。
「山田さん、正直に答えてくれ。俺たちはここまで命がけで戦ってきた。もし何か隠していることがあるなら、今言ってくれ。」
その言葉に、山田の顔色が僅かに変わった。彼は目を伏せ、しばらくの沈黙の後、静かに口を開いた。
「涼介…すまない。俺はお前たちを利用していた。」山田は重い口調で言った。
「利用していた?どういうことだ?」涼介は鋭く問い返した。
「俺は…実は、彼らと繋がっていたんだ。組織の情報を得ることで、自分のキャリアを築いてきた。そして今回も、彼らの計画を助けるために動いていたんだよ。」山田の声には、深い後悔が滲んでいた。
「なんてこと…」香織は驚きとともに、怒りを隠せなかった。「じゃあ、あなたが私たちに協力していたのは全部嘘だったの?」
山田は首を横に振った。「いや、すべてが嘘ではない。俺は本当にお前たちを助けたいと思っていた。だが、同時に俺自身の命も守らなければならなかったんだ。」
涼介はその言葉を聞いて、深い溜息をついた。山田が持つ苦悩と裏切りの重さが、その言葉の裏に見え隠れしていた。
「それで、結局、何をしようとしていたんだ?」涼介は冷静に問い続けた。
「彼らが計画している犯罪の一部を暴露し、裏切り者を排除する。そして、俺自身がこの世界から足を洗うつもりだったんだ。しかし、彼らを完全に壊滅させることは考えていなかった。だから、お前たちの動きを利用して、組織内の敵を排除しようとした。」山田は自嘲するように笑った。
「でも、そんなことが許されると思っているの?」香織が怒りを込めて言い放った。
「許されるとは思っていない。ただ、俺には他に選択肢がなかったんだ。」山田の目には悲しみが宿っていた。
涼介はしばらく考え込んだが、やがて決意を固めた。「山田さん、お前の裏切りは許されない。しかし、ここでお前を見捨てるつもりもない。お前が最後に真実を伝えるなら、俺たちと共に戦え。それが唯一の償いの道だ。」
その言葉に、山田は驚きの表情を見せた。「涼介…本当にそれでいいのか?」
「俺たちには、真実を明らかにすることしかない。お前がその手助けをするなら、今がその時だ。」涼介の声には、揺るぎない信念が込められていた。
山田は深く息を吸い、頷いた。「分かった。俺も覚悟を決める。」
その時、外からの足音が近づいてきた。追手が灯台に到着したのだ。涼介たちはすぐに身構え、最後の戦いに向けて準備を整えた。
「彼らが来た。これで終わりにする。」涼介は香織と山田に目を向け、力強く言った。
「ええ、もう後戻りはできないわ。」香織は決意を込めて答えた。
山田もまた、覚悟を決めた表情で頷いた。「俺も、ここで全てを終わらせる。」
三人はそれぞれの武器を手にし、灯台の扉の前で待ち構えた。外の敵が扉を破ろうとする音が響き、次の瞬間、激しい戦いが始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます