第7話 記者との接触

香織と涼介は、夜の街を慎重に進みながら、目指していた古い喫茶店に到着した。この場所は、涼介が信頼する数少ない知人の一人、記者の山田と密かに会うために選んだ場所だった。店は昼間もあまり客が入らない静かな場所で、夜になるとほとんど人影はなかった。


「ここなら、誰にも気づかれずに話ができる。」涼介は車を停めると、周囲を確認してから香織に言った。


「大丈夫だと思う?」香織はまだ緊張した様子で尋ねた。


「山田さんは信頼できる人物だ。彼なら、俺たちが見つけた情報を適切に扱ってくれるはずだ。」涼介は力強く答え、二人は喫茶店のドアを開けた。


中に入ると、店内は薄暗く、静寂が漂っていた。カウンターの奥で山田が一人、コーヒーを飲みながら待っていた。彼は中年の痩せた男性で、鋭い目つきが特徴的だった。


「よく来たな、涼介。」山田が彼らに気づき、静かに手招きした。「話を聞いてから、お前たちがここに来るまで少し心配していたが、無事で何よりだ。」


「色々あったが、今はこの情報を守ることが最優先だ。」涼介が山田に近づき、手に持っていたノートを見せた。「これが今回の事件の核心に繋がるものだと思う。内容はまだ解読しきれていないが、命が狙われるほど重要な情報が含まれている。」


山田はノートを受け取り、慎重にページをめくり始めた。「なるほど、確かにこれは普通のノートではないな…。いくつかの符号や暗号が含まれているようだ。これを解読するには時間がかかるだろうが、全力で取り組んでみる。」


「写真も見てくれ。これがその場所だ。」香織が写真を取り出し、山田に手渡す。


山田は写真を一枚一枚丁寧に見つめ、その後、写真の裏に記載された日付や場所の情報を確認した。「この場所は…確かに問題の倉庫近くの工場だな。ここで何が行われていたのか…。これも調べる価値がありそうだ。」


「頼むよ、山田さん。俺たちはまだ追われている。時間がないんだ。」涼介が切実な声で言った。


山田は涼介の目を見つめ、頷いた。「分かった。この情報を安全に処理し、しかるべき場所に届ける。だが、お前たちも気をつけろ。ここから先はますます危険になるかもしれない。」


その言葉に、香織は不安を隠せずに顔を曇らせた。「何か策はあるの?」


山田は一瞬考え込んだ後、「まずは、情報を分散させることだ。私一人でこの情報を抱え込むのではなく、信頼できる他のジャーナリストや関係者にも協力を仰ぐ。彼らが協力してくれれば、相手も容易には動けなくなるだろう。」と提案した。


「それはいい考えだ。でも、彼らはそれを知ればさらに動きを加速させるかもしれない。」涼介が冷静に分析する。


「その可能性もあるが、少なくとも情報を持つ人間が増えれば、君たちの身の安全も多少は確保されるはずだ。」山田は力強く答えた。


その時、喫茶店のドアが開き、風鈴の音が響いた。涼介と香織は一瞬緊張したが、入ってきたのは一人の若い女性だった。彼女は店内をちらりと見渡し、静かに席に座った。


「ただの客だろう。」山田が落ち着いた声で言ったが、涼介は依然として警戒を解かず、若い女性の動きを観察していた。


しかし、その時、香織のスマートフォンが再び震えた。彼女は息を飲みながら画面を確認すると、やはり「非通知」の表示が浮かんでいた。彼女はためらいながらも電話に出た。


「次は、お前たち全員が狙われる番だ。」冷たい声が再び響き、香織の心臓が凍りついた。


香織は電話を切り、涼介と山田に目を向けた。「今度は、私たちだけじゃない。山田さんも、彼らの標的にされるかもしれない。」


その言葉に、山田は顔を曇らせたが、すぐに冷静さを取り戻した。「私の命なんてものは、この仕事を始めた時から覚悟の上だ。だが、君たちが無事でいられるよう全力を尽くす。」


涼介は力強く山田の肩に手を置き、「ありがとう、山田さん。俺たちも君を守るためにできる限りのことをする。」と言った。


その瞬間、店の外から突然タイヤのスリップ音が聞こえた。涼介は瞬時に反応し、香織と山田を手早くテーブルの下に隠れさせた。次の瞬間、店の窓ガラスが銃弾によって粉々に砕けた。


「伏せろ!」涼介が叫び、店内は一瞬にしてパニック状態に陥った。


二人は山田との接触に成功し、情報を託す準備を整えたが、突如として襲撃を受ける。誰が彼らを狙っているのか?そして、情報を守るためにどのように立ち向かうのか?彼らの戦いはさらに激化し、物語は一層緊張感を増していく。

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