第4話 危険な駆け引き

涼介は男たちの動きを観察しながら、素早く次の行動を決めた。彼は香織に小さく頷いて見せた後、手元のスマートフォンで誰かにメッセージを送った。彼女はその意図をすぐに理解した。援護を呼んだのだ。


「ここからどうする?」香織が囁き声で尋ねた。


「まず、彼らが金庫を開けるのを阻止しなければならない。でも、人数的に不利だ。タイミングを見計らって、奇襲をかけるしかない。」涼介は冷静に作戦を練っている。


男たちは金庫に向き合い、その中身を取り出そうと必死になっていた。その様子を見て、香織はこの瞬間が好機だと感じた。彼らが集中している隙に、何とかして金庫を取り戻すことができるかもしれない。


涼介は棚の陰から素早く立ち上がり、静かに男たちに近づいた。その動きを見た香織も、後に続いた。彼らの気配に気づかれないよう、二人は足音を忍ばせて距離を詰めていく。


しかし、もう少しで距離を詰め切るというところで、一人の男が何かに気づき、顔を上げた。彼の目が涼介と香織の姿を捉え、驚愕の表情が浮かぶ。


「何者だ!」男が叫ぶと同時に、他の男たちも振り返った。涼介は瞬時に反応し、男の一人に素早く突進して彼を地面に押さえつけた。


「香織、金庫を!」涼介が叫ぶ。


香織は躊躇うことなく、金庫に飛びつき、それを持ち上げようとするが、思った以上に重く、持ち上げることができない。彼女が力を振り絞っている間に、他の男たちが涼介に向かって攻撃を仕掛けてきた。涼介はその場でうまくかわしながら反撃するが、相手の数が多く、次第に劣勢に立たされていく。


その時、倉庫の入口に突然複数の懐中電灯の光が差し込み、大勢の足音が響いた。男たちは一瞬動きを止め、光の方に目を向けた。


「動くな!警察だ!」響き渡る声が、倉庫内に緊張感をもたらした。


警察が到着したのだ。涼介が呼んだ援護が間に合ったのだ。警官たちは素早く男たちを取り押さえ、彼らに手錠をかけていく。涼介も深いため息をつき、ようやく安心した様子で香織に駆け寄った。


「大丈夫か?」涼介が心配そうに尋ねる。


「ええ、なんとか…でも、この金庫は簡単には開きそうにないわね。」香織は警官たちに見守られながら、金庫をしっかりと抱え込んだ。


「とりあえず、この金庫を署に持ち帰って解析しよう。何が入っているにせよ、これが事件の鍵になることは間違いない。」涼介は真剣な表情でそう言った。


警察の到着により、状況は一旦落ち着きを取り戻した。男たちは連行され、香織と涼介は金庫を署に持ち帰るために車に乗り込んだ。しかし、二人の頭の中には、まだ多くの疑問が残っていた。


香織が車の中でふと振り返ると、倉庫の暗闇の中に何かが動いたような気がした。しかし、その影は一瞬で消え去り、彼女は気のせいだろうと思い直す。


しかし、その後すぐに、彼女のスマートフォンが再び震えた。画面には再び「非通知」の文字が浮かび上がる。香織は不安を感じながらも、電話に出た。


「次は逃さない。」低い声が響く。


その言葉が終わると同時に、電話は切れた。香織は手が震えるのを感じながら、涼介にそのことを告げる。


「これは終わりじゃない。まだ何かが続いている…。」


涼介は重い沈黙の中で頷き、二人は再び走り出した。彼らは金庫の中身と、謎の電話の背後にある真実を追い求めて、さらに深い闇へと進んでいくことになる。


金庫は手に入れたが、新たな脅威が再び二人を襲う予感が漂う。金庫の中身は何なのか?そして、非通知の電話の正体は?二人は更なる危険に直面しながら、事件の核心に迫っていく。

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