Episode 2 二子玉川奪還作戦 - DAY 1(1)

ピーッピーッガガッ...

ウルフバイツ第二部隊 チームAは装備ルームに集合し、出撃準備を行って下さい。繰り返します、ウルフバイツ第二...



作戦日当日の朝5時、俺は出撃アラームと共に目が覚めた。目覚めと共に祈る、今日を生き残り明日を生きれるよう...。


―――――――――


装備ルームには伊藤と田中が既に到着していた。


「駿くん、おはよー。朝の作戦は眠いねー」


「おはよう、神谷」


「あぁ、おはよう」


毎回、お互いに挨拶を済ませると一瞬の沈黙が訪れる。


「それじゃー...準備しよっか?」


「そうだな」


俺は伊藤に返事をした後に衣服型防御兵装・FCA-type V(冬用の黒の特殊迷彩服)に着替え、目の前にあるオートウォーク(動く歩道)に乗った。中を進むとAIがバイタルチェックなどをしてくれるのだ。


―― ID確認。

WB020153・第二部隊チームA・神谷駿。

バイタルチェックを行います、スキャン開始。

――バイタル安定、出撃可能です。



登録兵器を出庫しますか?


「YES」 or NO




俺は深呼吸をした後、画面上で点滅するYESの選択ボタンを押した。



――申請が受理されました。

「短剣型狭域弱露きょういきじゃくろ兵装・SE01-Orgオーグ」および「短剣型狭域決殺兵装・RC01-Org」、出庫します。

取り扱いには注意して下さい。


アナウンスの後、オートウォーク上部から二つの黒剣が降りてきた。基本的にこれらの武器には軽く丈夫なカーボンが使用されている。


俺は目の前の双剣を手に取り、壁の内側と外側の境界にある待機ルームに到着した。


すぐ後に伊藤が到着した。手には柄の両端にカーボンブレードがついた槍刀を持っている。

伊藤凪紗の登録武器、

両刃槍りょうじんそう型広域制圧兵装 SE08-Mk Ⅱマーク・ツーだ。


「駿くん、みてみて!防御兵装に新作のType P(パーカースタイル)が追加されてたの!どう、似合う?」


「――だぼっとしてて動きにくそうだな...」


「あー!そこは『可愛いね』でしょ!まったく、お世辞の一つくらい言ってよね!」


そう言うと伊藤は頬を膨らませて、そっぽを向いてしまった。


「待たせたな」


最後の田中が到着し、待機ルームにアナウンスが流れる。


―――チームA、待機ルームに到着。

ゲートを開けます、扉から離れて下さい。

繰り返します。ゲートを開け....


ビービーッというアラームと共にゲートが開く。


俺ら、一介の兵には未来などない。

死ぬまで屍人を殺し続け、たとえ生き残ったとしても俺らは元犯罪者。反逆の恐れがあると処分されるらしい。


それでも今日、東京を奪還するため、日本という国のため、俺らは死地に飛び込むのだ。


――――――――――


ゲートが開くと目の前には元田園都市線の線路が伸びていた。そして、おびただしい人数の屍人がいる。

伊藤が俺らの一歩前に出る。


「駿くん、私が先に行くね。ここは線路の上、幅が限定されてるから私のSE08-Mk Ⅱセイトちゃんの出番かなって」


「了解した、取りこぼしは俺に任せろ」


「俺は防壁上部から援護狙撃する」


「了解、田中。頼んだ」


そう言って田中は壁面を走るように防壁の上に向かった。


「じゃ、始めるよ!」


伊藤が武器を胸の前で地面と平行に構え、柄の中心にあるくぼみに親指を押し当てる。


「SE08-Mk Ⅱ―起動!」


―――生体認証・WB020154・伊藤凪紗。

使用者を認識。SE08-MkⅡ、起動します。


指向性音声による起動アナウンス(俺には聞こえていないが)と共にカーボンと軽量金属で構成されたSE08-Mk Ⅱに青の発光ラインが浮かび上がった。

そして、原理は不明だが起動と共に色のついた空気の揺らぎ(?)が武器の周りに発生する。


―――オートバック機能をオンにしますか?


「うん!オンでお願い」


―――オートバック機能をオンにしました。


「ありがと!じゃあいくよ!」


伊藤が武器を頭上に上げ、回転させ始めた。


「俺も準備しないとな」


俺は両手に持った剣の持ち手にあるくぼみに親指を押し当てた。


「SE01-Org、RC01-Org起動。オートバック機能、オン」


―――生体認証・WB020153・神谷駿。

使用者を認識。SE01-OrgおよびRC01-Org、起動します。オートバック機能、オン。


SE01には赤の、RC01には白の発光ラインが浮かび上がる。

屍人達が空気の変化を感じてか、こちらに気づいた。


「ググゥ...ガガアァ!」


「伊藤」


「ん、何?」


「絶対に死ぬな」


「ふふっ、駿くんもね」


後ろは壁、前は屍人の軍勢。

身は一つ、持つは不死殺しの武器のみ。

俺らに未来はない。ただ...今日を生き残り続けるしかない。


―――――――――

【用語】


屍人しびと

突如として世界中に出現した化け物。

人を喰らい、襲われた人も屍人になってしまう。

当初、ウイルスの感染による凶暴化に思われたが、違うということが分かっている。

通常の攻撃ではダメージを与えられず、国が開発した特殊兵装でのみ殺傷が可能。


■屍人殲滅部隊ウルフバイツ

屍人のよって隔離された東京を奪還するために編成された部隊。全部で九部隊ある。


【登場人物】


神谷駿かみや しゅん

1)プロフィール

22歳の青年。本章の主人公。

身長190cm, 身体増強剤の副作用で髪は白くなっている。短髪のオールバック。

学生時代は空手をやっていた。


2)使用武器

短剣型狭域弱露きょういきじゃくろ兵装・SE01-Orgオーグ

SE01シリーズの原点。

カーボンと軽量金属で構築された黒の短剣で、起動すると赤色の発光ラインが浮かび上がる。

性能は、斬った相手の■を■■させる。RC01シリーズとの相性が良い。


短剣型狭域決殺兵装・RC01-Org

RC01シリーズの原点。

カーボンと軽量金属で構築された黒の短剣で、起動すると白色の発光ラインが浮かび上がる。

性能は、斬った■を■■から排除する。SE01シリーズとの相性が良い。


伊藤凪紗いとう なぎさ

1)プロフィール

22歳の女性。

身長168cm、身体増強剤の副作用で味を感じない。青髪のポニーテール。

学生時代は剣道をしていた。


2)使用武器

両刃槍りょうじんそう型広域制圧兵装 SE08-Mk Ⅱマーク・ツー

カーボンと軽量金属で構築され、柄の両側に刃を持つ黒の槍。起動すると青色の発光ラインが浮かび上がる。

性能は、本槍が■■■■■■となる対象の■■を無効化する。


田中宗介たなか そうすけ

1)プロフィール

28歳の青年。

身長173cm, 身体増強剤の副作用で匂いを感じない。

黒髪のパーマ。

学生時代は射撃をしていた。


2)使用武器

名称:不明

性能:不明




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