世田谷区奪還編
Episode 1 ウルフバイツ第二部隊 チームA
約三年前、
世界中の都市で化け物が出現した。
その化け物は人を喰らい始め、喰らわれた人もまた化け物になり人を襲い始めた。
その化け物をここ日本では
海外ではUndeadと呼ばれているらしい。
俺が屍人殲滅部隊、通称ウルフバイツ第二部隊として世田谷区防壁に派遣されてもうすぐ半年が経つが、戦況はよろしくない。
当初は50人はいたであろう部隊員が10人まで減った。追加の人員はない。人体増強剤に耐えられる人がそもそも少ないのだから仕方がないが。
「おーい!駿くーん!そんなところで何してるのー!」
「伊藤か」
「おーいってば!もうすぐミーティングが始まるよ!」
「分かった!すぐ行く」
防壁の上に座っていた俺は立ち上がり、正面を流れる多摩川を見る。
川の向かいは以前は二子玉川と呼ばれ、お洒落な店が並ぶ住宅街だった場所だ。
今は灰黒い肌に、赤光する血管を走らせているお客様でいっぱいになっている。
彼らは壁を壊そうとぞくぞくと川を渡って来ている。天は快晴、地は曇りと言った風景だ。
今日も生き残れると良いな、心の底からそう思う。
そんな思いを抱きながら防壁の梯子を降りていった。
――――――――――――
壁を降り、世田谷区部隊本部にある隊長室に到着した。
「遅いぞ神谷!」
「すみません。壁外の監視をしておりました」
「ほう、監視ねぇ。伊藤から聞いた話では壁の上に座って双眼鏡も持たず、ぽけーっとしていたらしいが?」
「あ、あのー。ぽけーとは言っていない気が...」
「伊藤は黙ってろ!」
「は、はい!」
今日の部隊長は少し機嫌が悪そうだ。
ウルフバイツ第二部隊の隊長。
過去に何をしたのかは知らないが、その統率力を買われ部隊長に選ばれた40代の男性だ。
「おっし。それじゃあ第二部隊チームAの今週の作戦を伝える」
唯我隊長が話を始めたタイミングで伊藤が小声で話しかけてきた。
「駿くん駿くん。ペナルティ無くて良かったね!」
俺と同い年の22歳で同時期に配属された隊員。
快活な女子で、チームAのムードメーカーだ。もともと剣道を嗜んでいたようで、戦闘力も高い。
「今週の目標は『二子玉川駅の奪還』だ。あそこは地上よりも高い位置に駅のホームがあり、拠点として使いやすい」
「隊長、俺は防壁からの援護射撃をすれば良いですか?この辺りで高く見晴らしが良いのはここかと」
「田中はそうだな。今回は直線かつ視覚を遮らない線路上から攻めていく。前線を神谷と伊藤。後衛を田中が担ってくれ」
「はっ!」
28歳の男性で俺と伊藤が配属される前からこの部隊にいる。隊長を含めて俗に言う初期メンバーというやつらしい。
過去にスポーツで射撃をしていたらしく、狙撃班に所属している。
初めの頃は遠くから撃ってるだけの臆病者だと思っていたが、自身が待機する場所を確保するためにビル一つを奪還したのはもはや伝説になっている。
「作戦開始は明朝6時。各々、武器の整備や作戦地の監視を行ってくれ。以上解散!」
隊長室を出た俺らはそれぞれの自室に戻っていく。
明日失うかも知れない命を噛みしめるように自身と話し、心の準備を整えるのだ。
―――――――――
【用語】
■
突如として世界中に出現した化け物。
人を喰らい、襲われた人も屍人になってしまう。
当初、ウイルスの感染による凶暴化に思われたが、違うということが分かっている。
■屍人殲滅部隊ウルフバイツ
屍人のよって隔離された東京を奪還するために編成された部隊。全部で九部隊ある。
【登場人物】
■
22歳の青年。本章の主人公。
身長190cm, 身体増強剤の副作用で髪は白くなっている。短髪のオールバック。
学生時代は空手をやっていた。
■
22歳の女性。
身長168cm、身体増強剤の副作用で味を感じない。青髪のポニーテール。
学生時代は剣道をしていた。
■
28歳の青年。
身長173cm, 身体増強剤の副作用で匂いを感じない。
黒髪のパーマ。
学生時代は射撃をしていた。
■
40代の男性。
身長168cm, 身体増強剤の副作用で上半身の触覚がない。黒髪の短髪で顎ヒゲを生やしている。常にサングラスを付けており、身体に入れ墨がある。
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