第12話:夜空の森
周りの人の話だと、例年なら黒い
(あの黒い
ヒカリがそう考えていると、シロは何かを思い出し、ヒカリに問いかける。
「ヒカリ、ミノタウロスやゴブリンと戦った時に君の光線が効いていたのを覚えてる?」
「うん、もちろん覚えてるよ。でも、それがどうかしたの?」
シロは続ける。
「僕が思うに、ヒカリの光線には聖属性があるんじゃないかと思うんだ。最近、ヒカリの能力を色々と試してみてるけど、光線を木に当ててた時に焦げすらつかないし、動物にも何の影響もなかったよね」
ヒカリとシロは暇な時間帯に宿屋の裏庭や川原で様々な実験を行っていた。
光線についても様々な物質に試し撃ちを行い、どんな影響を及ぼすのか確認をしている。
「聖属性って何?……悪いものではないってことだよね?」とヒカリは戸惑いながら尋ねる。
「そう。聖属性は悪いものに対して浄化の力を持つと言われているんだ。もしかしたら、このルミナリウムたちの黒い靄も、ヒカリちゃんの光線で浄化できるかもしれないよ。ルミナリウム自体も聖属性を持っているから、光線を当ててもルミナリウムには害がないはず。やってみない?」
ヒカリはシロの提案に頷く。
光線を放つことで、黒い
2人は丘を下って森の中に入り、黒い
ルミナリウムは逃げずにふよふよと飛んでいるが、突然羽を止めて数十センチ落ちてしまったり、バックをしてみたりと不規則な動きをしている。
ヒカリは集中し、
すると、光線が黒い
最終的に、ルミナリウムは本来の青白い光を取り戻し、ぼやけていた光がクリアに輝き始めた。
「やった!これを繰り返せば、全部のルミナリウムが元に戻るかもしれない」とヒカリは喜びの声を上げる。
その後も、シロと共に地道に浄化を進めていった。
連続で光線を発しているのでかなり疲れてきたが、絶景のためなら何のその、ヒカリはまだまだ浄化を続ける覚悟だ。
100匹近くのルミナリウムを浄化し終えた頃、彼女たちの目の前にひと際大きなルミナリウムが現れた。
1匹が縦横10センチほどの大きさだったのが、このルミナリウムは3倍近くある。
大きいだけではなく、他のルミナリウムよりも黒い
「この個体が他のルミナリウムに靄を移しているみたい……」とヒカリは観察の結果、気づいた。その大きなルミナリウムが靄のないルミナリウムを引き寄せており、お互いが触れた瞬間に、普通だったルミナリウムが
ヒカリはすぐにその大きなルミナリウムに集中して光線を放ち、
他の個体に比べて時間がかかったが、光線が徐々に染み込み、少しずつ
すでにかなりの光線を出していたのでへとへとだったが、なんとか
羽はガラスのように透けるほど薄く、複雑な模様が浮かび上がっている。
さっきまでの動きとは異なり優雅に舞い、ルミナリウムの全身が虹色に輝きだした。
その光は一際鮮やかで、森全体に広がっていく。
虹色の光をを浴びた周囲のルミナリウムたちからは、だんだんと黒い
ルミナリウムたちが本来の姿を取り戻したことで、森は一気に輝きを増し、夜にもかかわらず辺りを光で覆い尽くす。
夜空を地上に映したかのようとはよく言ったものだ。
数千ものルミナリウムがまるで天の川のように群れを成して飛び交い、その光は星よりも美しく輝き、絶えず変化し続けた。
7つの色彩が混ざり合いながら、まるで生き物のように流れるその光景に、ヒカリは息を呑んだ。
「本当に夜空の中にいるみたい……」ヒカリは感動のあまり、涙を浮かべながら
やがてヒカリとシロは丘に戻り、森を一望した。
浄化されたルミナリウムたちが輝く中、観光客たちは喜びの声を上げている。
ある観光客が、「今年の光景、やっぱり少し変だったよね」と話し始め、別の観光客が言う。
「そういえば、最近黒い
ヒカリの耳にも届いていたが、絶景に目を奪われており頭には入っていない。
(強くなくても、できることは色々あるのかも……次は、どこに行こうかな)
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