第9話:陽斗と仲間たち
3人で一緒に並んで同時に手に入れたので、ゲームを開始するのも同時にするつもりだった。
ただ、最初が一番難しいこと、一度プレイを始めてしまうと簡単にはやめられないことは事前情報でわかっていたので、3徹の疲れを一度リセットしてから始めようと、全員で一度寝てから始めることにしている。
きっちり8時間睡眠をとり、音声チャットで連絡を取り合った。
「準備はいいか?」
「「おう! やろうぜ!」」
陽斗が問いかけると、興奮が抑えきれない様子で2人が同意する。
「「「ゲームスタート!!」」」
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ヒカリから遅れること半日、新宿の街にたどり着いた陽斗たち3人、特に陽斗は、プレイヤーの間で一躍時の人となっていた。
プレイヤーが集まる場所として、各街にギルド施設が用意されており、なんとかして陽斗を仲間に入れようとするプレイヤーで溢れている。
街にたどり着く前の森の中、プレイヤーの中で唯一、ミノタウロスを倒すことに成功したプレイヤーが陽斗だった。
陽斗は「バトルマスター」のスキルを得ており、その力で1体のミノタウロスを倒したのだ。
だがそんな英雄も、プレイヤーの中だけでの話だ。
陽斗たち3人は、路地裏で地元民の強盗に襲われていた。
陽斗は友人たちを守るように剣を構え、強盗たちと対峙している。
ちょうどその時、陽斗たちが絡まれている路地裏を偶然横切ったのがヒカリだ。
当然、何かよからぬことが起こっていることは見てとれたが、怖い……ので、すぐにその場を立ち去ろうと歩くスピードを上げる。
「陽斗ばっかりに任せてたまるか、俺だって武器はあるんだ、買ったばかりのこの弓矢を喰らえ!」
陽斗の後ろに隠れていた友人が、突然そう言うと矢を引きしぼり、強盗に向けて放った。
が、その狙いは大きく外れて大通りに向かって飛んでいく。
ヒカリの背中に吸い込まれるよう、一直線に矢が飛んでいった。
「あっ……やっば……」
放った本人は
いち早く反応したのは陽斗だった。
「避けろ!」
その声に振り返ったシロが叫ぶ。
「ヒカリ、危ない!」
ヒカリが振り向くと、目の前に矢が迫ってくるのを感じた。
「えっ……な、何?」思考が追いつかず、ただなんとなく早い物が迫っていることを感じ取る。
と、周囲の動きがなんとなくゆっくりに感じられ、それと同時にどう動けば矢を避けられるかが直感的にわかった。
だが、ヒカリがこの矢を避けてしまった場合、矢は少し後ろにいる住人に刺さってしまう……そんな気がする。
とにかくヒカリは、己の直感に従って、なんとなくの力加減でなんとなくの方向……に鞄を投げた。
すると、適当に放り投げた鞄に矢が突き刺さり、地面に落ちたのだ。
ヒカリは驚きで心拍数が上がったままだが、矢を抜き取る。
「ここに置いておきますね……」と矢を置いて深々とお辞儀をし、足早にその場を去っていった。
陽斗はその様子を
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