第3話:輝瞳スキル

「お待たせシロちゃん、これからよろしくね」


「うん、よろしくねヒカリ、この世界での冒険をサポートするからね。さあ、まずは基本的な操作やルールを教えるから、一緒にやってみよう!」


ヒカリは頷き、シロに従って歩き始めた。

初めての視覚に慣れない彼女を優しく導きながら、シロはゲームの基本的な操作方法や、この世界のルールを細かく教えてくれる。


「ヒカリの最初の目的は、近場の街にたどり着くことだよ。ここは比較的安全なんだけど、外は本来危険な場所なんだ。プレイヤーの3分の1が、このスタートでゲームオーバーになってしまう」


「えっ……3分の1!? ほとんどの人がいなくなっちゃうってこと?」


「うん。だから、ここからは気を引き締めていこう。大丈夫、一緒に最初の難関を潜り抜けよう」


その言葉に、ヒカリは不安になりつつも、その存在に支えられながら、新しい世界への一歩を踏み出し始める。


「ヒカリ、まずは簡単なクエストに挑戦してみようか」


シロが提案すると、ヒカリは緊張しながらも頷いた。

クエストという言葉を聞いたことはあったが、それが具体的にどのようなものかは分からない。

しかし、シロがそばにいてくれることで、彼女は恐れることなく挑戦する決意を固める。


「この近くに隠されたアイテムがあるはずだよ。ヒカリのスキルを使って、それを見つけてみよう」


「スキル……?」


ヒカリが首をかしげると、シロはにっこりと笑って説明を続けた。


「そう、ヒカリのスキル『輝瞳きどう』だ。これを使うと、なんというかとにかくよく見えるんだ。慣れてきてレベルが上がると様々な能力が目覚めるはずさ」


ヒカリはシロの言葉に従い、視力に意識を集中させる。

すると、目の前の景色が少しずつ変わり、世界がさらにクリアに見えるような感覚が広がっていった。

ヒカリは驚きながらも、その力を使って周囲を探索し始める。


すると、20メートル程先に朧げに光っている場所があった。


「あそこに……何かある」


ヒカリが呟くと、シロは満足そうに頷く。


「そう、その調子だよ。この世界に来るときにヒカリが強く望んだから貰えたスキルだ。これからの冒険できっと役立つはずさ」


見つけたアイテムを拾い上げると、それは地図だった。

手に取ると同時に地図が消え、頭の中にその情報が思い浮かぶようになる。


「何これ、不思議」


「マップ機能だよ。便利だからログインアイテムとしてみんなに付与してるんだ。現実でも使えるはずだから、帰ったら使ってみてね」


「現、実……そうだ! 早く、現実に帰ってお父さんとお母さんに会いたい! 会って、思いっきり抱きつきたい!」


「うん、そうしなよ! けど、それも最初の街についてからだ。外でログアウトしてしまった時、その体は完全に無防備な状態で放置されてしまう。街の宿屋で安全を確保してからログアウトするのが基本だからね」


「そうなんだね、わかった。じゃあ、早速街を目指そう!」


地図を思い浮かべると、西に10キロメートル進んだ場所に都市があるようだ。

現実世界でいうところの新宿が都市になっている。


「新宿から10キロメートルなのに、こんなに自然ばっかり……やっぱりゲームの世界なんだ」


肌に感じる風や温度、足の裏の歩く感覚まで全てが現実のように感じられる。

本当にすごい技術だ。


「ヒカリ、輝瞳スキルを使って遠くを見てみて」


「遠く?」


シロが手を向ける方向に目を凝らすと、輪郭はわからないが何か黒いものが動いているのが見える。


「なんだろうあれ?」


「モンスターだよ。今、戦ったら絶対に殺される」


「えええ、じゃあ逃げないと!」


「大丈夫、これだけ離れてれば気づかれないよ。ただ、真っ直ぐ行かずに避けて進もう」


迂回を何度か繰り返して半分が過ぎた頃、2人は森に突入した。


「葉っぱって、間近でみるといろんな緑色が混ざってるんだね。木の表面もただの茶色じゃなくて、何色にも色が重なって見えるよ」


「そうだね、ヒカリにとっては全てが新鮮だから大いに楽しむといいよ。ただ、これから森だ。森は見通しが悪いだけじゃなく、モンスターが多く潜んでいる危険な場所なんだ。最初にゲームオーバーになるのも、ほとんどが森の中なんだよ。ここからはペースを落とし、できる限り輝瞳スキルを使いながら進もう」

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