第2話 夜海の波音

そこからはお盆の準備。

明日はお墓参りだから、お線香やらお花やら

用意したの。


夜はみんなでお刺身。

私はあきあきしてたけど、おばちゃんも

なっちゃんも美味しいって。

お肉食べたいなぁ。


じいちゃんは漁師だったし、漁港の漁労長までやってたから、今でも小さな船を持ってて

魚をとりに行く。

じいちゃんはお酒も入って上機嫌。

武勇伝を話し出すけど、毎年、おんなじ話だから適当に相槌をしてる。

そんなじいちゃんが怖い顔で言う事がある。


「いいか?

土用の時には女は海に入っちゃんねぇ。

海の神様が怒るからな。

連れ去られて、海の泡になっちまうんだ。」


これも毎年の話なんだ。

もう、うんざりしながらみんな聞いてないんだ。


「姉ちゃん、なっちゃん凄いね。東京でも有名な学校に合格してさ。

ピアノのコンクールも出たらしてさ。お嬢さまじゃん!」お母さん


「うん、そりぁ、この島からみたらそうだけどね。東京じゃ公立中学は柄が悪いのよ。

ピアノコンクールっても、全国で3位だもん。

はぁー、個人レッスン代もばかにならないのに。」おばちゃん


「またあ、なっちゃん、努力家じゃない。

大体、姉ちゃんなんか勉強してるの見た事無かったじゃん!よく、言うわ。」お母さん


「中高一貫だからね、もう、競争は始まってるのよ。もっと成績も上げとかなきゃ、ピアノとかもね。そういうのが内部推薦の加点になるのよ。学級委員やるとかさ。

夏華には立候補させたわ。

その分、私だってPTAの役員とかもやってんの。」おばちゃん


「真似できんわ。風華なんて学校に何しに行ってんだか。毎日、プールで真っ黒だもんね。

勉強なんて宿題だって30日に大慌てで半泣きで

みんなでやるんだもん。」お母さん


お母さんのバカ!何もそこまでバラす事ないのに。なっちゃんに、、。

私はほっぺをぷくーとしてたら、なっちゃんが

「ふうちゃん、花火しよう、持ってきたのよ。」って誘ってくれた。


にいちゃんはご飯をさっさと済ますと自分の部屋に入ってパソコン三昧。

なっちゃんと海辺に花火とバケツと蝋燭とチャッカマンを持って出かけた。


「ふうちゃん、夜の海って静かだね。

この世の景色じゃないみたい、、。」


「そうかなぁ。いつも夏はこんなだよ。

それより、花火、花火ーーっ。」


最後に線香花火をした時、なっちゃんは

その飛び散る炎をじっと見つめてこう言った。

「ふうちゃん、私ね、この島に来るのは今年で終わりなのよ。

来年からは塾の夏期講習がね、あるの。」


「え?そうなの、、、。

なっちゃん、大変なんだね。」

本当はあまりの事にびっくりし過ぎて

どうしたらわかんなかったんだよ、なっちゃん。


「うん。高校の内部推薦貰わなきゃ。

お母さんが決めたから、、。」


「ねぇ、なっちゃん。じゃあ、高校生になったら来る?」


「高校生になったら次は大学だもん。

たぶん、無理だろうなぁ。

だからね、今年は島てふうちゃんと遊びまくろうと思うんだ。」


「そう、、なんだ、、。」

何故だか、なっちゃんが消えそうで

そんな返事しか出来なかった。













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