#022 ドカ食い大好き
――――スライムを倒しました。獲得経験値2をステータスポイントに変換します――――
「ハハッ、魔力供給よりも、コッチの方が深刻か」
『キュ?』
『ケロン?』
「大丈夫だ、問題ない」
試しにスライムを倒したところ、なんと入手経験値はたったの2。しかも切り捨てだ。やはり眷属の厳選は必須。
「まぁいいや、それじゃあカエデ用の靴と、ついでに新しいプロテクターを作るか」
『ん~~』
『ケロ~ン』
とはいえ救いはある。あるていど距離をとれば経験値分配は発生しないので、育成が終わった眷属は連れ出さなければ済む。切り捨てなのを考慮すると現実的には(俺も含めて)5か10体が最適解なのだろう。
「えっと…………おっ、ガインのヤツ、張り切ってくれたな」
ガインには草や木材を集めてもらっているので、紙の材料には事欠かない。
「あっ、そうだ! えっと…………"これ"、食べるか?」
『ケロ~~ン』
余っていた雑野菜を食べるカエデ。カエルのエサは虫のはずだが、走り蛙は木の実も食べる。栄養バランスも考えるなら虫や魚も与えたいが、ひとまず余りがちな野菜が活躍してくれそうだ。
「食べ方は、完全にカエルなんだよな……」
舌を伸ばし、粘性の唾液でエモノを舌先に貼り付ける形で引き寄せ、丸呑みにしてじっくり消化する。虫を食べ散らかさないのは、本当に助かるポイントだろう。
『ケロ……』
「おっ、満腹か? まぁ休んでいるといい」
しかし欠点は、腹が膨れると一時的に能力が低下する点だろう。そのあたり切り分けるなどして調整できそうだが…………この先、成長するとサイズは人をこえる。そんな状態で動けなくなるのは致命的なので要注意だ。
「そういえば、適正量ってどれくらいなんだ? ドカ食いのしすぎで、走れないデブ個体に進化するのは勘弁してくれよ」
『ケロロ……』
ダメだ、さっぱり分からん。エサが豊富なのも考えもの。ドカ食い大好きなホラー漫画の結末をなぞらないよう、食べ物の扱いは注意せねば。
「まぁいいや、なるようになるだろう。今はコッチに集中だ」
分解した植物を水に溶かし、ひとまず枠に流し込む。
「問題は、ここからなんだよな」
紙はキヅキに接続すると劇的に固くなる。しかし常時固いわけではない。普段は紙で、魔力で瞬間的に強化しているにすぎない。ようするに衝撃を受けた時の硬化が間に合わず、数割のダメージが貫通してしまうのだ。
「えっと、これくらいか?」
ほどよいサイズの板を用意して、紙の液を軽く絞りながら盛っていく。ようするに篭手にプレートを仕込むように、最初から固い部分を作るのだ。
「ん~、最初から程よく柔らかい木が、あればいいんだがな」
木は固いが割れやすい。コルクやゴムなど、変形して牙などを受け止めてくれるのが理想なのだが、無いものは仕方ないので木と紙を組み合わせて現状の最適解を探っていく。
「ひとまず、こんなものか」
同じ要領で腕と足の防御プレートを作る。本当は首や胴回りも防御した方がいいのだろうが、そのあたりは動きの邪魔になる。ひとまず後回しにして、じっくり作り込んでいきたい。
「おっと、そういえば」
紙の液を追加する。プレートもそうだが、メインはカエデの装備だ。走り蛙は、使役した個体を判別するのに靴や鞍を用いる。鞍はまだ背負えないので、まずは靴だ。
「成長も早いだろうし、フリーサイズなものがいいんだが……」
靴と言えばゴム底。ゴムを扱えないのが悔やまれるが、無いものはしょうがない。
「まぁ、
もちろん本当に藁を編んで作る気はない。あくまで構造を模倣するだけだ。
「ようするに、サンダル、なんだよな……」
木のプレートと蔓草を紙で繋げていく。キヅキを接続できないので強度不足になるだろうが、今は幼体なので気にしない。『壊れてもOK』の精神だ。
「ひとまずこんなものか? 最初は慣れないだろうが、まぁ、我慢してくれ」
『ケロロ??』
血糖値スパイク状態のカエデに、草鞋を履かせてみる。基本的に固定するのは足首で、紐でズレないよう補助していく。急激に成長した場合は紐が切れてくれるはずだが、寝かせる時は忘れず脱がしてやろう。
「どうだ? 違和感はないか??」
『ケロケロ~~ン』
ひとまず喜んでくれているっぽいので、良いことにしておく。
こうしてカエデの靴は完成し、必要なものや今後の課題が、また大量に増えてしまった。
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