#021 デッテユ~

「幻獣を連れた異国人ですが、どうやら暗殺者アサシンだったようです」

「殺し屋だと!? そんなヤツが何故、こんな辺境に?」

「憶測ですが、ギルドで問題をおこし、国にいられなくなったのかと」

「そういえば所持品はどうした?」

「連中は、知らぬ存ぜぬでした」

「そうなると、素性を隠すためにわざと処分したか、あるいは隠したか……」

「これ以上かかわるのは危険と思われますが、いかがしますか?」

「引き続き探らせろ。しかし刺激はするな! 殺し屋なら、何か利用できるやもしれん」





「そろそろか……」

『ん~』


 早朝、早くも走り蛙の卵が動き出した。孵るのが早すぎる気もするが、この手の卵は大抵『適切な環境で魔力を貯め込んだら孵る』ものらしい。


「ヨ、よ、余、よし…………吉田…………義男……。ダメだ、ヨから離れられない」

『ん??』


 眷属化に失敗するにしろ、孵るなら育てるまで。必然的に名前が欲しくなるところだが、どうしても"ヨ"から始まる名前を基準に考えてしまう。


「つか、ほんとうに青だよな? 緑は、いや、ダメって事はないのだが」


 また少し魔力を送ってやる。あまり多くても吸収しきれないので、加減してコツコツ送って、ようやく今って感じだ。


「3体目だから、ミ、ミッシー、ミッキ…………って! なんか悪化している気がする」

『ん??』


 そういえば初代相棒を入れたら4体目だし。ますますヨから離れられない。


「おっ! 生まれるのか??」

「kekeke……」


 卵にヒビが入り、丸い独特の手? が見える。


「頑張れ! もう少しだ!!」

『キキッ!』

「ke……ke……」


 ヨシ! 青いぞ! 最悪のパターンは回避できた!!


「たしか、手伝っちゃダメなんだよな? もどかしい……」

『ん~』


 あれ? 手伝った方がいいんだっけ? とりあえず走り蛙は放置だったので、そのやり方にならう。


「ke……ke……kerrooon!!」

「おぉ、生まれた!!」

『ん~~~』

「おっと!」


 ここまで手伝わずに見守ってきたが、割れた卵の殻が帽子になり、さらに下の殻から足が出ていたので、思わず排除してしまった。


「kero……」

「いまさらだけど、オタマジャクシじゃないんだな。まぁいいや、俺がオマエの親だぞ。分かるか?」

「detteyuu」

『ん!』

「あぁ、そうだ、"コレ"」


 血と共に魔力を与える。この魔力は卵時代から送り続けたものなので認識できるはずだ。


『ケロォ??』


 ――――眷属が追加されました――――


「ヨシ! 成功だ。えっと、お前の名前は…………そうだ、蛙手かえで、カエデだ!!」

『ケロ~ン』


・眷属:カエデ レベル1

体 力 :20

魔 力 :10+10

筋 力 :15

防御力:5

理 力 :10+10

精 神 :10+10

敏 捷 :15+8

技 能 :5


「よかった、気に入ってくれて。もし、ヨ…………いや、なんでもない」

『『????』』


 無事、新たな眷属を得たわけだが(キヅキの時から何となく察していたが)、やはり眷属にはいくらか魔力を供給するもののようだ。これは追加の魔力供給とは別で、常時、少量の魔力が流れている。これが眷属との繋がりであり、ステータスボーナスになっているのだろう。


 ゲーム脳で解釈すれば、眷属はコスト制であり『大量の走り蛙を眷属化して……』みたいなのは難しそうだ。とはいえ、あえて眷属化しない手もある。例えば孵すところまで手伝い、あとは群れのボスとしてカエデに率いてもらうとか。


『ヨ……、ヨ……』


 早くも歩き出すが、さすがによちよち歩きだ。


「そうだ、靴! 靴をつくろう!!」


 飼育下の走り蛙は、足を守るために蹄鉄がわりの靴を履かせる。そういえばニンジャスーツも改良予定だったし、纏めてやってしまおう。


『デッテユ~』




 こうして新しい眷属、走り蛙のカエデが仲間に加わった。

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