#015 フシギ草
「ニノ、それじゃあ行きますか」
『キッ!』
3人とわかれて森に入る。危険なのは間違いないが、村の近くは対策しているらしく比較的安全なんだとか。
「ん~、足跡とか、あれば分かりやすいんだが……」
森に入って狙うのは4つ。
①、食料の確保。村では家畜も育てているが、飼育数が少なく食用にはしていないそうだ。野菜なら何とでもなるが、やはり肉も食べたいし、現金収入につながる魔物の素材も入手したい。
②、新たな仲間の確保。どういった方式にせよ、仲間が増えれば出来る事が一気に広がるのである程度優先したい。
③、能力の検証。俺の能力や魔力の利用法は謎だらけ。せっかく異世界に来たので、出来るだけ使いこなしたい。
④、経験値稼ぎ。当然だが強くなれる。ゲーム脳的に考えると、最終的な強さ重視でスキルポイントを集中させたいところだが、ステータス項目の開放も気になるので、ひとまずオール100を目指す予定だ。
「こんな事なら、おっちゃんの話、もっと聞いておくんだったな」
俺の叔父は狩猟免許を持っていて、ときどき鹿や猪を狩っている。おかげで解体の仕方などは教えてもらったが、一緒に山に入った事は無い。山は危険なので当たり前だが、痕跡のたどり方や、罠についても教えてもらえばよかった。
『ん!』
「おぉ、これは」
地面に残る魔力の痕跡。魔力には波長(属性)のようなものがあり、これは徐々に拡散していく。つまり木属性の痕跡があれば『最近ここを木属性の魔物が通った』と推測できるわけだ。
「またトレントかな? 嬉しくはあるが…………トレントしかいないってのは勘弁してくれよ」
当たり前だが、木は食べられない。せめて木の実でも出せたらよかったのだが、少なくともキヅキにそういった能力は無かった。
『キッ!』
「うわっ、なんだこれ。キモッ」
肩から飛び降りて中型形態になるニノ。そしてその視線の先にあるのは、蠢く緑のイソギンチャク。植物モンスターは、意外な事に女体化率が高く…………秘かに期待していたのは秘密だ。
「もしかしてアナタは、かの有名なフシギ草さんでしょうか?」
よく見ればカエルのような生物に寄生している。たぶん寄生型の魔物で、カエルを移動手段や栄養源にしているのだろう。
「ニノ、頼む!」
『キュイ!』
<幻炎>でスリップダメージを与えつつ、俺が荒ぶる葉を切り払っていく。
「動きは、たいしたこと、ないな!」
トレントに比べれば動けるが、中途半端というか、完全に強みが失われている。立ち位置としてはトレントとスライムの中間くらいの強さだろ。
『ん!』
「そろそろか、うまいぞ、ニノ」
『ん~~』
程よく弱ったところで<幻炎>を解除するニノ。幻獣様として崇められるだけあって、本当に賢い。そしてなにより可愛い。たぶん魔物としての"格"が、そもそも違うのだろう。
「さて、問題は依り代か……」
キヅキの成功例から推測するに、最適なのは"草"なのだろうが、枯草でもいいのか? 草を編んで作ったブレスレットなどでよければ便利なのだが、土付きの生草に限定されると不便だ。最悪の場合、カエルのように寄生されるのを受け入れないといけない可能性もある。
「あぁ、そうだった。これも……」
ナイフで髪を切る。毎回、血を取るために自傷していたら精神的に病んでいる人みたいなので、髪の毛で代用できないかも試すつもりだった。
「よし、こんなものか」
キヅキを伸ばして、先端に適当な蔓草と髪の毛を挟む。瀕死とは言えまだ生きているので、安全な距離は確保しておきたい。
「ほれ、ほれ、こっちの水は甘いぞ~。じっさいのホタルが、甘い水を好むかは知らないけど」
なんだか釣りでもしている気分だ。
『ん!』
「おぉ、きたきた…………てっ、そうなるの??」
――――キヅキのレベルがあがりました――――
なんと草の魔物はキヅキと融合してしまった。属性と言うか、同種の魔物だったのだろうが…………うん、さっぱりわからん!
その後も何体か植物系の魔物を取り込んだが、レベルがこれ以上あがることはなく…………その日は森で鶏肉に似た(カエル)肉を入手して狩りを切り上げた。
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