#007 DOGEZAスタイル
『この変態め!!』
『大人しく投降しろ!』
「ちょまっ! これには深い事情が!!」
とっさに両手をかかげ非抗戦を主張するが…………そういえば纏っていたのは雨よけの帆。その拍子にずり落ちてしまった。
『なっ! コイツ、やる気だぞ!!』
『村長、下がってください! この変態、何かします!!』
「逆効果かよ!?」
どうやらこの国にホールドアップのジェスチャーは通用しないようだ。それはさて置き、こいつら、丸腰(正真正銘)の相手にビビり過ぎだろ。そんな事を考えていると……。
『控えよ!! 人の子らよ』
『『なっ!!!?』』
ニノが肩から飛び降り、俺を庇うように…………巨大化した。
『我が主に危害を加えると言うのなら、我が相手になろう!!』
『ヒヘェェェ、げ、"幻獣"だ!!』
『あイェぇ、なんで、こんなところに!?』
幻獣って、ニノの事だよな? もしかして、有名? というか、強いの??
『し、失礼しました。幻獣様と、その契約者だとはつゆ知らず…………これ、お前たちも!』
『『は、ははぁぁ』』
平伏す3人。どうやら降伏は、DOGEZAスタイルが正解だったようだ。
『うむ、よきに計らえ』
『『は、ははぁぁ』』
そういってニノは小型形態に戻り、俺の首に巻きつく。3人が丸腰の俺にビビった理由は、もしかしたら狼男のように変身すると思ったのかもしれない。
『よしよし』
『ん”~~』
何となくだが、辛そうに見える。たぶん、さっきのはハッタリ。幻獣なのは間違いないのだろうが、まだまだ幼く、あれが精いっぱいなのだ。
「えっと、村に危害をくわえるつもりはありません。ただ、道中で水浴びをしていたところ、所持品を賊に奪われ、途方に暮れていたしだいで」
『そ、そうでしたか』
とっさに出た
「それで、よければ村に、しばらく泊めてもらえないでしょうか。仕事があれば手伝います。装備が整えば出ていきますので」
まずは装備と言うか、衣類を揃えたい。そしてそのあとは安住の地を探しつつ、冒険者か行商人にでもなって、この異世界を見て回りたい。
『そ、それでしたら……。……』
*
「えっと、ココを左って…………あ、これか」
いったん村の入り口まで戻り、そこから自然にかえり始めた脇道をすすむ。
『ん~』
「すこし、落ち着いたか」
推測だが、ニノは魔法生物であり、魔力の使い過ぎは死活問題。あのまま無理を続ければ、体が崩壊していた可能性もある。
『ん、ん~』
「そうか、よしよし」
『ん~~~』
はい、可愛い。
それはともかく、幻獣と言うのは、日本で言えば山のヌシや天狗様みたいな存在なのだろう。基本的に恐怖の対象だが、比較的温厚で意思疎通まで出来る。定期的にお供え物を奉納すれば、かわりに他の脅威から守って貰える。
「ここが、俺の家か」
ほどなくして朽ちかけた小屋と、小川にちょっとした池。ここは現在、高齢化で放棄された猟師小屋であり、ここなら自由に使っていいそうだ。
「さて、まずは、掃除だな」
『ん!』
掃除と言っても、小屋の掃除ではない。いや、それもしなければならないのだが、まずは魔物の一掃。完全に魔物の住処になってしまっている。
こうして俺たちは、先住民に立ち退き勧告(物理)を突き付ける。
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