第2章 生意気なダンジョンマスター

第1話 ダンジョンのレベルアップ

「ようやく、ようやく来た!」


僕はあまりの嬉しさに歓喜の声を上げる。

ダンジョンのステータスを確認すると、ある変化が起きている。


渋谷ダンジョン Lv3


最深部 2階層


所属魔物:スライム、シルクワーム、レッサーウルフ、シルバーフォックス


産出資源:鉄、銅


DP 8790


SP 1


ダンジョン特性

複数召喚


そう、先日ついにダンジョンレベルが上がったのである。

レベル2になるのは割と早かったため、ダンジョンレベルは頻繁に上がるものだと勘違いしていた。

だが実際にふたを開けてみると、レベルが上がるのに2か月以上もかかってしまったのである。

もしかするとダンジョンレベルはダンジョンで得られるDPに何か関係があるのかもしれない。

実は先日稼いだDPは、ダンジョン運営を始めてから最も多くなり、固定でかかるDPを差し引いても一日で1000DP以上稼いでいた。

どうやら由香里がダンジョンのすぐ近くで待っていたのを目撃した探索者がいたらしく、「Sランク探索者がいるダンジョンはかなりおいしいのでは?」という噂がネット上で流れているらしい。

おかげで頻繁にダンジョンに戻る羽目になり、あまりに魔物の処理速度が速いせいでわざわざ学校を早退したほどだ。

今回の事態を受けて、僕はダンジョンのある特性がどうしてもほしくなった。


魔物の自動召喚

ダンジョン内でフロアの魔物が一定量減少すると、自動で同じ魔物を配置する。

配置場所や魔物は自由に設定可能。


始めてこの特性を見たときは、自分で配置すれば選ばなくていい特性だと思っていた。

だがいざ地上でやるべきことが増えてしまうと、無性にほしくなる特性である。


「少しでもタスクを減らさないと、日常生活に支障が出そうだ」


僕は即決する形で、この特性を選ぶことにした。


「なるほど、階層によって細かく配置できるのか・・・」


自動配置の特性を選択すると、いつの間にかダンジョンのモニターの左側に、現在ダンジョン内にいる魔物の数と配置が表示されるアプリが追加されていた。

これまでダンジョンの拡張も魔物の解放もモニターの下側にあるタスクバーに表示されていた。

この二つの機能がダンジョンの基本機能だとすると、今回追加されたアプリは追加コンテンツのような扱いなのだろう。


「そしたら階層を3フロアに分けて配置してみようかな」


実は魔物同士にも敵対意識を持っている魔物がいて、基本的に同じ魔物ツリー内にいない魔物とは仲良くできない。

そのため虫系であるシルクワームとスライムはこれまで、ダンジョン内で鉢合わせないように分けて配置していた。

魔物もこちらの意図を理解しているのか、配置した場所から一定の距離内でのみ活動している。


僕は入り口近くをAフロアとしてスライムを配置し、中間地点をBフロアとしてシルクワームを配置することにした。

魔物の数もそれぞれ最低召喚数を30体として、それ以上減らないようにした。

これで魔物の配置と召喚については完全に自動で行うことが出来る。


「こうなると魔物が少ないかもな」


最低でも1階層はCフロアまで分けておきたい。

そうすればお金稼ぎだけでなく、ランクを上げる目的で訪れる探索者も増えるからだ。


「ここはレッサーウルフでも配置しようかな」


素材がまずいせいで誰も倒したがらないだろうと無視していたが、ダンジョンにバリエーションを持たせるためにも追加することにした。

レッサーウルフも召喚してみると、毛はかなり短いが案外モフモフなため悪くないのかもしれない。


そして貯まったDPを使用して新たに魔物を召還できるようにしよう。

現在狼派生のツリーを解放していっているため、どうせならこのツリーを中心に魔物を追加していった方が良いだろう。

その方が他のダンジョンと差別化も出来て、より一層ダンジョンの人気を上げるきっかけにもなるからだ。


「えっと、シルバーフォックスの次が・・・さ、3000DP!?」


500DPだったものが一気に6倍に膨れ上がってしまった。

そうなるとさぞ良い魔物が召喚できるのだろうと、解放できる魔物を見てみることにした。




白狐

白い毛色を持つ伝説の狐の妖怪。

強力な炎魔法と、呪法を操ることが出来る。


野狐

野生の狐が妖怪になった存在。

人間を化かす能力により奇襲攻撃が得意である。


仙狐

厳しい仙術の修業を積んだことで神通力を操れるようになった狐。

神通力は魔法と違って、体内の気を操作して操る能力である。


「なんか急にいろいろ変わったな・・・」


白狐は説明を読んだ感覚からして、シルバーフォックスの正当な進化と言えるだろう。

名前から察するにこの魔物達のモチーフはみんな狐の妖怪なのだろう。

この魔物の達の名前は昔読んだ本の中に出てきた狐の妖怪と同じ名前だった気がする。

となると小説でよく見る伝説の妖怪の九尾とかも、この先ツリーを進めていけば召喚できるようになるかもしれない。


「火魔法はシルバーフォックスが扱えるから、他の能力を使える魔物が良いかな」


そうなると野狐か仙狐の2択になるのだが、神通力という不思議な能力に目を引かれ仙狐を解放することにした。


「これが仙狐か・・・」


仙狐の見た目はパッと見て黄色の体毛をした普通の狐と変わらなかった。

だが通常の狐に比べて、数倍ほど体格が大きく、鋭い目つきをしている。

僕は配信で新しい魔物を追加したことを発表することにした。


「みなのもの、配信の時間なのじゃ!」


:来たぁ!

:ユリア様久しぶり!

:2週間ぶりかな?


「すまんのう、みなのもの」


「生活が忙しいせいで、なかなか配信が出来なかったのじゃ」


:なら仕方ない

:そういえば学校の行事とか言ってたっけ?

:ユリア様その姿で高校生になれたの!?

@ロリコンニキ:制服姿のユリア様・・・だと!?

:↑お巡りさんコイツです


「相変わらずコメント欄に変態がおるが、無事に高校に通うことになったぞ」


「おかげで一瞬にして身元がバレてしまったせいで、一時期大変な思いをしたんじゃがな」


:ユリア様一目で分かるもんね

:もしかして忙しかったのって料理コンテストじゃない?

:料理コンテストってあの学校か!

:つまりユリア様の手料理を食べた審査員がいるってこと!?

@ロリコンニキ:ウラヤマシイ・・・

:ロリコンニキの語彙力が低下していて草


「わしのリアルの話はここまでじゃ、今回はタイトルにもある通りダンジョンに新しい魔物を追加したのじゃ」


「一体はレッサーウルフじゃから特に紹介はせんが、もう一体はシルバーフォックスと同じ狐の魔物じゃ!」


:新魔物キタァァ!!!

:狐の魔物ってまだいるの!?

:これは魔物の考察界隈がさらに賑わうかもな


「魔物の名は仙狐といって、神通力を扱う魔物じゃ」


:神通力って何?

:超能力みたいなものじゃない?

:霊力とか念力とかの超常現象を起こせる能力だった気がする

:新能力ってこと!?

:これは魔法に次ぐ新たな能力として、伝説になるかもな

:また一つ伝説を残してるよユリア様・・・


「じゃが仙狐は未知数な魔物じゃから、挑む際は十分に注意するのじゃ」


「わしが見た感じじゃとDランク以上のパーティが推奨じゃな」


:そこそこ強いかもな

:中堅探索者が挑むくらいか・・・

:シルバーフォックスを余裕で倒せるなら挑んでもいいかも

:俺、ちょうどDランクだし挑んでみようかな


「そして今日の配信は久しぶりに雑談をしてから配信を終えるぞ」


その後いつも通り1時間ほど雑談を行った。


「それではみなのもの、さよならなのじゃ」


:ユリア様さよなら

:神配信だった・・・

:ユリア様のダンジョンしか勝たん

:明日絶対に行くぞ!

@ロリコンニキ:お疲れ様


配信を終えてから仙狐を召還し、膝の上にのせてみた。

シルバーフォックスと違って全体的に毛が太く、とてもふわふわした毛並みをしている。

しばらく触っていると、あまりの心地よさに眠気が来てしまい、そのまま寝てしまった。

シルバーフォックスが枕だとすると、仙狐はさしずめ毛布といった印象だ。

今後もモフモフな魔物が増えることを考えると楽しみでしかない。

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