第13話 学校に通わなくちゃ・・・

ダンジョン運営を始めてから一つ疑問に思ったことがある。


「そういえば前に通っていた高校はどうなったんだろ?」


生前まで通っていた高校は公立の一般校だった。

特に進学校でもなかったため、放課後や休みの時間をダンジョン探索に充てることが出来た。

もし前世の戸籍が抹消されているなら、必然的に高校も退学になっているはずだ。


「また通い直さないとな・・・」


探索者は学歴が必要な職業ではないが、せめて高校くらいは出ておきたい。

だがそのためには大きな問題がある。


「この見た目じゃ、小学校からやり直しになるのかな」


現在の見た目はどう見ても小学生にしか見えない。

そしてもう一つ重大な問題があった。

僕は自分のステータスを改めて確認した。


ユリア・フィール(幼体)

性別:女

種族:魔人


Lv13

HP:122/122

MP:150/150


スキル:ダンジョン操作 


称号:低級魔物スレイヤー

   オーガ討伐者

   番狂わせ


それは種族の問題である。

あの謎の男が言うには魔人は人間に比べて寿命が長い分成長が遅い。

このままでは周りの同級生が成長する中、一人だけ背が低いままになってしまう。


「美春さんに相談してみるか・・・」


その後隣の部屋にいる美春さんにそのことを伝えると、意外な答えが返ってきた。


「ユリアちゃんはそのまま高校に通っても大丈夫だよ?」


「ですが今の見た目はどう見ても小学生では・・・?」


「その辺はダンジョンの呪いで実年齢とは違いますって言えばいいかな」


「そもそも探索者の再登録も、特に問題なかったでしょ?」


「あ・・・そういえばそうでしたね」


以前探索者の身分証を新たに発行する手続きを行った。

その時は美春さんが身元を保証してくれたので年齢制限にも引っかからず、17歳のまま登録することが出来た。

おかげで今も他のダンジョンでお金を稼ぐことが出来ている。


「私のパーティメンバーが通っている高校があるから、来月から通ってみる?」


「私立だとお金の面が厳しいので、公立の学校に通いたいのですが・・・」


「もう、私たちは義理とはいえ姉妹なんだよ?そのくらい私が出すよ!」


「あ、ありがとうございます」


「ふふん、お姉ちゃんをうんと頼るといいよ!」


編入の手続きはギリギリ募集期間内に応募することが出来たらしく、9月から高校に通えるようになった。

たまたま体が変化したのが運よく夏休みのシーズンだったおかげで、スムーズに手続きを行えたと思う。

ちなみに編入試験はあまり難しくなかった。

探索者はレベルの恩恵で、学力が高くなる傾向がある。

これから通う高校はそんな探索者に向けた学校らしく、美春さんの紹介というのもあって特別に編入を許されたのである。

そして月日は流れ、あっという間に初登校の日となった。

どうやら美春さんのパーティメンバーである愛理あいりさんが迎えに来てくれるらしく今は学校の支度をしてマンションの外で待っている状態だ。

しばらくすると女の子が声をかけてきた。


「あなたがユリアさんですか?」


「は、はい!愛理さんですよね?」


目の前の女性は黒髪のストレートヘアでいかにも大和撫子のような美少女である。


「美春さんはお元気ですか?」


「今は動画の編集をしているとかで」


「そうですか、私たちのパーティでパソコンに詳しいのは美春さんだけなので、いつも負担をかけてしまって申し訳なく思っています」


「確かに機能も目をこすりながら作業をしていましたが、私を抱きしめたとたん復活していたのできっと大丈夫ですよ」


これは本当のことだ。

美春さんは僕から何かしらのエネルギーを接種しているらしく、どれだけ疲れていても僕と接触したとたん、嘘のように回復している。

美春さんには何か特殊な能力でも備わっているのではないかと、疑っているくらいだ。


「ふふ、確かにあの美春さんならそうでしょうね」


「私とは年も同じですし、敬語で話さなくても大丈夫ですよ」


「そうなんですか?」


「ええ、私もピチピチな現役の高校2年生なんですよ」キュピ☆


愛理さんは目元でピースをしながらポーズをとっている。

やはり美春さんのパーティだけあってどこか抜けていた。


学校に着くと、そのまま職員室に案内された。

そこには僕の担任の先生となる人物が、椅子に座って待っている。


「君が今日から編入することになったユリアか、私は斎藤さいとうあやという名前だ」


「今日から私が君の担任になるから、分からないことがあれば何でも聞いてくれよ?」


「わかりました」


斎藤先生はやや男勝りの口調をしていて、金髪に碧眼とただならぬ気配を感じる。


「愛理、ユリアは私が教室に連れて行くから、君は先に教室で待っているように」


「分かりました」


それから愛理さんは職員室を出ていった。


「さて、ユリアはこの学校についてどこまで知っている?」


「探索者向けにカリキュラムを組んでいる特殊な高校とだけ」


「概ね正解だ、この学校の生徒は全員が探索者志望だ」


「そのため一般的な高校と違って、授業の中に戦闘訓練も含まれている」


「すごい学校ですね」


「だがユリアには一つ問題があるんだ」


「問題とは?」


「お前さん用の装備が無い」


「え?」


「この学校で支給される装備は、どれだけ小さいサイズでも身長140cm以上でないとぶかぶかになるんだよ」


「あぁ、なるほど・・・」


ちなみに僕の身長は133cmだ。

この身長はだいたい小学4年生くらいの身長らしい。


「自分用の戦闘服があるので問題ないですよ」


「そういえばユリアは探索者だったな」


「分かった、ユリアだけ特別に許可しよう」


その後、斎藤先生に連れられて教室についた。

始めに斎藤先生がホームールームを初めて、それから僕が入室する手はずになっている。


「入りなさい」


「はい」


斎藤先生に呼ばれてから教室に入ると、40人ほどの生徒たちが待っていた。

その視線は明らかに僕の身長を指していて、かなり居心地が悪い。


「今日からこのクラスにやってきたユリア・サラテクトだ」


「ダンジョンの呪いでこんな姿になっているが、みんなと同じ17歳だから仲良くするように」


「よろしくお願いします」


すると教室の女子たちが騒ぎ出した。


「かわいい!」


「まるでお人形さんみたい」


「静かに!ユリアに質問のあるやつはホームルームの後にでもしなさい」


「分かりました」


「それじゃユリアは一番後ろの席が空いてるから、そこに座りなさい」


「はい」


「それじゃ、ホームルームの続きを始めるぞ?」


その後ホームルームが終わるや否や、女子たちに質問攻めにあった。

人見知りながらも、かなり頑張って答えていたと思う。

だがそれよりも驚くべきことが一つだけあった。


「ここ女子高じゃねぇか!!」


転生して早2か月、僕は女子高の生徒になってしまった・・・



始めて女子高の制服を着たユリアのイラスト

https://kakuyomu.jp/users/rikuriku1225/news/16818093084233370300


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