第9話 やはりモフモフは正義である

役所での手続きを終えて、僕は無事に戸籍を手に入れた。

美春さんの両親はかなり忙しいらしく、顔合わせは当分先になるそうだ。

僕は美春さんと別れた後一度ダンジョンに帰宅し、今後のダンジョン運営に頭を悩ませていた。


渋谷ダンジョン Lv2 


最深部 1階層


所属魔物:スライム、シルクワーム


産出資源:鉄、銅


DP 877


SP 0


ダンジョン特性

複数召喚


「複数召喚のおかげでDPは増えやすくなったけど、ダンジョン自体はほとんど成長してないな・・・」


ダンジョンを成長させるにはより多くの探索者に来てもらう必要がある。

このダンジョンは産出資源がまずいため所属魔物を増やす必要があるが、そのためには大きな問題があった。


「今解放できる魔物が全部微妙・・・」


新たな魔物を召還するためにはDPを使って、魔物ツリーから魔物を解放する必要がある。

魔物ツリーは以前、ダンジョン内のモニターを調べていた時に偶然見つけたもので、ゲームでいうところの研究ツリーのようなものだ。


魔物ツリーには派生の魔物が存在し、スライムはスライム派生の一番上にいる魔物だ。

シルクワームもスライムと同様にワーム派生の一番上にいる魔物で、解放するために100DPを消費した。


他にもゴブリン派生のゴブリンや狼派生のレッサーウルフといった魔物が魔物ツリーの一番上に位置付けられている。


だがゴブリンとレッサーウルフは使える素材がほとんどなく、GからFへとランクを上げるための証明素材でしかない。


いずれのツリーも下に3つずつ枝分かれしていて、解放すれば上位の魔物を召還出来るようになる。


「かといってシルクワームの下のツリーはな・・・」


シルクワームのツリーには虫系の魔物が3体表示されている。


ニードルワーム 全身に棘を生やした幼虫。


ポイズンワーム 体液から毒性の分泌液をだす幼虫。


シェルワーム 全身が固い甲殻に覆われた幼虫。


いずれの魔物も素材は悪くないが、如何せん見た目が悪い。


「シルクワームは白色だからいいけど、他は完全に害虫の見た目だからな」


今後配信に魔物を映す機会が多くなるだろう。

その時虫だらけのダンジョンだと知られたら、閲覧注意のダンジョンとして晒されることになる。

そうなればますます人気が無くなって、ダンジョン運営が立ち行かなくなるのだ。


「ここはDPを多く消費してでも新しい魔物を・・・!」


僕はウルフ派生であるレッサーウルフを選択することにした。

魔物ツリーは下位の魔物を解放しないと、次の魔物を見ることが出来ない。

レッサーウルフが100DPで次の魔物が500DPとすると召喚用のDPとダンジョンを維持するためのDPも含めてかなりDPが厳しくなる。

ここで見た目が良くて素材が美味しい魔物を引かなければ、僕はダンジョンと共に消えることになるだろう。


「来い!いい感じの魔物!!!」


まずはレッサーウルフを解放した。


レッサーウルフ 薄い体毛と貧弱な筋力が特徴のおおかみ


すると下のツリーに派生として3つの魔物が表示された。


ブラックウルフ 黒い体毛で覆われたおおかみで集団行動を得意とする。


シルバーフォックス 銀色の毛色を持つきつねで火の魔法を扱える。


ブラウンラクーンドック 茶色の毛を持つたぬきで水の魔法を扱える。


「ブラックウルフは知ってるけど、他は知らないな・・・」


ブラックウルフは集団で活動する習性があるため、パーティでの討伐が推奨される厄介な魔物だ。

素材は黒色の毛皮がコートなどに活用できるため、換金率もそこそこ良い。


「ただブラックウルフなんてどこにでもいるんだよな・・・」


他のダンジョンでも戦える魔物を配置したところで、産出資源の悪いこのダンジョンは見向きもされない。

やはりこのダンジョン特有の魔物が必要だろう。

そこで見栄えもよさそうなシルバーフォックスを解放することにした。


数日後自身のチャンネルで配信を開始した。


「みなのもの、久しぶりなのじゃ」


:ユリア様きた!

:1週間ぶりだね

:楽しみすぎる


チャンネルの名前はダンジョンを運営していることが分かりやすいように、ユリアのダンジョン運営チャンネルに改名した。

これで話題性も上がって、ますます人が来てくれるかもしれない。


「しばらく戸籍関係の用事があってな、そのせいで配信が遅くなったのじゃ」


:呪いで変わったからか

:役所の人困惑してそうw

:つまり日本の戸籍に新たな幼女が誕生したってこと!?

:ロリコン二キいて草

:お巡りさんコイツです


「今回の配信は新しい魔物を追加したことを報告しに来たのじゃ」


「よいしょっと」


僕はそばに寝ころばせていたシルバーフォックスを抱き寄せた。


「シルバーフォックスという魔物じゃ」


:初めて見る魔物だ

:かわいい

:狐の魔物って初めてじゃない!?


「ほれモフモフじゃぞ」


:カワ(・∀・)イイ!!

:これは癒されますな

:家で飼いたいかも


「今はこんな見た目じゃが、ダンジョンでは凛々しい姿で火の魔法を使ってくるから気を付けるんじゃぞ?」


:魔法を使えるのか・・・

:Eランク以上のパーティ推奨だね

:今度戦ってみる!


その後軽い雑談を一時間ほどした。


「今回の配信はここまでじゃ」


「みなのもの、さよならなのじゃ」


:お疲れ様

:ユリア様バイバイ

:良い配信だった


配信終了後、シルバーフォックスを枕にすると気持ちが良いことに気付き、シルバーフォックスは僕専用の枕になった。

モフモフってやっぱりいいよね!


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