ダンジョン運営は地獄です～TS幼女は最高のダンジョンを目指して奮闘する～

第8話 炎上配信者桜の復帰配信

私はどこにでもいる女子高校生の探索者だ。

名前は水無月桜っと言って・・・ってこれも二回目か。

今はパソコンの前に座ってとある事件の後始末をしている。

配信活動はあれから自粛していて、マイクすら触っていない。

毎日のように配信していたのに、これだけ休んでいるとどうも落ち着かない

ネット上には私に対する誹謗中傷やコメントがズラリと並んでいる。

それもこれも私が以前配信したことが原因だった。

この数日まともに寝れた試しがない。

一度は死のうとまで考えた私だったが、数日前に届いた一つの手紙に救われた。

桜さんへ

配信を拝見させていただきました、正人の妻である紅葉です。

本来なら直接お会いしてから謝罪をしたかったのですが、身重な体のためご了承ください。

始めに夫である正人が、あなたを見捨てて逃げ出したことに謝罪をさせてください。

大変に申し訳ありませんでした。

後日改めて夫に謝罪へ向かわせますので、お待ちいただけると幸いです。

そして今回の件で貴方が自分を責めることはありません。

今回のは実力もですが、何より運が悪かったのです。

ダンジョン内では何が起こるのか、誰にもわかりません。

これは同じ探索者でなければ分からないことなのです。

貴方に対する誹謗中傷も拝見させていただきました。

どれもダンジョンに対する理解が浅く、ダンジョンを軽視した人たちの発言がほとんどでした。

きっと他の配信者のようにダンジョンでの成功体験ばかりを見せられてきたのでしょう。

貴方が誰よりも責任感の強い方なのは、以前電話越しで話されたときから薄々感じておりました。

今回のことで決して自分を卑下することだけは、どうかやめてください。

いつかともにダンジョンへと探索に行けることを心よりお待ちしています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　紅葉

この手紙を読み終わると、いつの間にか涙がこぼれていた。

私も配信活動なんてものをやっている身だ。

今回に限らず、誹謗中傷なんて日常茶飯事である。

「配信しよう」

まずは謝罪からだろうか。

その後は今後の目標を語って・・・

私は次の配信でやりたいことをまとめた。

メモには「私がしたい１０のこと」という題名がかかれている。

・復帰配信をする

・チャンネル登録者１００万人突破

・Ａランク探索者になる

・パーティの結成

今はこの４つだけだが今後はもっと増えていくだろう。

「あ、忘れてた、これも書いとかないと」

私はいくつかの空欄を飛ばして、最後の１０行目にある目標を書き込んだ。

・私を救ってくれた男の子と再会すること

あの日晴彦さんの遺体は無かった。

ひかりさんは魔物が持って行ったと言っていたけれど、あの日は不自然なほどに魔物が居なかった。

だから私の中で晴彦さんは、きっとどこかで生きているような気がする。

もしもう一度会えたなら、あの日のお礼をしよう。

そのことを心に誓いながら、配信の準備を終えた。

「みんな久しぶりだね」

：桜ちゃん！？

：コメントが削除されました

：復帰配信ってこと？

「ん～ちょっと違うかな」

「今回の件で私が炎上してるのは知ってるでしょ？」

「私が悪いのは正しいことなんだ、実力が足りていないのに数字をとるために下層に潜った」

「そのせいでパーティのメンバーを危険な目に合わせて、挙句の果てに一人の探索者を巻き込んでしまった」

「これだけは私が背負わなければいけない責任だから、今後はこのことに向き合い続けないといけない」

「でもダンジョン内では今回みたいなことは日常茶飯事なんだ」

「みんなは他の配信者みたいに成功体験しか見たことが無いと思うんだけど、本当は危ない目にも合ってると思うんだ」

：そうなんだ

：同じ探索者だから分かるよ、それが世間と探索者の認識の違いだから

：桜ちゃんだけじゃないんだな

「探索者は完全な自己責任、みんな自分の命を対価にお金を稼いでる」

「だから今後、私みたいな失敗をしてしまった配信者の人が出ても、今回みたいに叩かないであげてほしいかな」

「それだけは約束してね」

：分かった

：ダンジョンについてよく知らないのに、悪口を書いてごめんなさい

：今後は俺たちも意識を変えていかないとな

：桜ちゃんは配信活動を続けるの？

「今後の配信は続けるよ」

「私、配信を通してやりたいことがいっぱいできたからね」

：引退しなくてよかった

：今後の成長に期待できそう

：桜ちゃんのやりたいことか・・・気になる

「みんなには内緒だよ？これは私だけの目標だからね」

「それじゃ今日の配信はおしまい、また明日から配信していくから応援よろしくね」

：桜ちゃんさよなら

：お疲れ

：楽しみ

その後配信を終えると、いつもよりすがすがしい気持ちになった気がした。

やはり言いたいことをはっきりとみんなに伝えられたことが大きいのだろう。

「まずは部屋の掃除をしないとね」

１週間の間に部屋は散らかり放題になっており、そこら中に衣服が散乱している。

ご飯もカップラーメンばかりで、栄養も偏っていた。

これからは生活態度を改め、私が定めた１０の目標に向かって毎日精進していこうと決心して行こうと思う。

私こと水無月桜は、以前の邪な感情で続けていた配信とは違って、生まれ変わったのだから・・・