第2話 どうも最弱のダンジョンマスターです・・・

「ぷはぁ!ここは!?」


目が覚めると知らないダンジョンの中にいた。


「お!やっと起きたか」


「お前はさっきの・・・」


目の前にはさっきまでオーガを従えていた男が座っている。

すると男はまたゲラゲラと笑始めた。


「それにしてもなんだよ!その姿は・・・ククク」


「何を言ってんだ?何も変わって・・・なんじゃこらぁぁぁ!」


自分の手を見ると、まるで小さな子供のような手をしている。

背丈は小学生くらいで、髪が異常に伸びていた。

指で髪を触って確認してみると金色に変化している。

終いには長年連れ添ってきた息子はどこかに消えていた。


「多少変わるとは思ったが、まさか幼女になるとはな!」


「ふざけんなぁぁ元に戻せ!!!てかお前のせいで死んだんだから一発殴らせろ!!!」


「わりぃわりぃ、こっちじゃどんな姿になるかは完全にランダムだからわからないんだよ」


「せめて大人にしてくれ!」


「それは無理だな、お前ステータス見てみろよ」


「ぐ・・・分かった」


「ステータス」


すると僕の現在の状態が表示された。


ユリア・フィール(幼体)

性別:女

種族:魔人


Lv11

HP:90/90

MP:120/120


スキル:ダンジョン操作 


称号:スライムスレイヤー

   ゴブリン討伐者

   オーガ討伐者

   番狂わせ


「魔人種は数千年は生きる長命の種族だから、成長も遅いんだよ」


「あと数十年はそのままだと思え」


「なんでだよ・・・」


僕は膝から崩れ落ちてしまった。


「さて、そろそろダンジョンマスターについて説明してやろう」


「その前になんで僕をダンジョンマスターにしたんだ?」


「単純にお前さんを気に入ったからだ」


「あそこでオーガが現れたのはあの三人が実力もないのに下層に足を踏み入れたからだ」


「だからあれはあいつらの自業自得ってやつだよ」


「そこにお前さんが現れた、いやぁ痺れたねぇ・・・装備は貧弱、ステータスは百倍差、おまけにスキルも無い」


「そんな奴が女の子を逃がすだけじゃなく、オーガに一矢報いたんだからよ」


「お前さんには何か光るものを感じたんだ、もしかしたら俺の目的に近づく良い駒になるんじゃないかってな」


「目的?」


「おっと、これ以上は企業秘密ってやつだ」


「とにかく今からダンジョンマスターについて説明するからしっかり聞いておけよ?」


「分かった」


「まずその名の通りダンジョンマスターはダンジョンを運営する奴のことだ」


「DPっていうポイントを使って魔物を召還したり、ダンジョンの階層を追加したりしてダンジョンを運営していくわけだな」


「DPは使い切りなんだろ?どうやって貯めるんだ?」


「良い質問だな、その答えは単純で探索者に魔力を使わせることだ」


「DPっていうのは魔力をもとにして作られる、ダンジョンの血液みたいなもんだ」


「ダンジョン内で人間が魔力を使うと、即座にDPに変換され、それをもとにダンジョンを運営する」


「お前さんダンジョンの壁に向かって魔力を流してみろ」


「分かった」


男に言われた通りダンジョンの壁に魔力を流すと、ステータスのような画面が表示された。


渋谷ダンジョン Lv1


最深部 1階層


所属魔物:スライム


産出資源:鉄、銅


DP 389


「残りDP389って多いのか?」


「めちゃくちゃ少ない」


「このくらいのダンジョンだったら1000以上は残ってないと厳しいんだよ」


「いや、なんでこんなに少ないんだよ」


「このダンジョン立地はいいけど、資源がめちゃくちゃまずいんだ」


「ダンジョンは存在するだけでDPを消費していくからな、最初の先遣隊せんけんたいが来て以来このダンジョンには生まれてからほとんど探索者が訪れてない」


「なるほど・・・」


確かにとれる資源が鉄と銅しかないなら、探索者には人気が無いのだろう。

ダンジョンの中には金やダイヤモンドが取れるものも存在している。

いまさら鉄と銅のために危険をおかしてこのダンジョンを探索する理由はないに等しい。



「ちなみにDP無くなったらダンジョンと共にお前さんも消滅するから気を付けてな」


「は!?今めっちゃ大事なこと言わなかった!?」


「そんじゃあとは自分で頑張れよ」


「おい!まて!」


男は僕の声に耳を貸すことなく、その場から消えてしまった。

僕はひとまず現状を把握するためにダンジョン内を調べてみることにした。


「あれはスライムか?」


ダンジョンの壁には数体ほどスライムが貼りついている。

僕がスライムに近づくと、スライムは僕に気が付いたのか足に貼りついてきた。


「まずい溶ける!」


スライムは酸性の粘液で人を攻撃する魔物だ。

このままでは足が焼けただれてしまうだろう。

だがスライムに貼りつかれた場所はまったく痛くなかった。


「甘えているのか?」


スライムはすりすりと体を足にこすりつけている。

どうやら魔物はダンジョンマスターには友好的なようだ。


「結構かわいいかも」


僕はスライムを抱きかかながら、再びダンジョンを調べることにした。


それから数時間後ダンジョンを調べて分かったことがある。


「このダンジョンなんもねぇ!!!」


壁にはいくつかの鉱脈があったものの、宝箱はおろかダンジョンで時折発見される魔石溜まりも存在していない。


この魔石溜まりは低ランクの探索者にとって一番の大きな収入源であり、例え資源がまずいダンジョンでも魔石溜まりが多いダンジョンは非常に人気である。


「このままじゃ本当に消滅しちゃうよ・・・」


この日僕は日本でも最弱のダンジョンを運営することになってしまった。





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