第21話 変身!時空監察官シズカ!

「私が丸腰で戦うなんて、誰が言ったの?」

「何を、下手な強がりは止すんだな!」

 首領はあくまでも強気を崩さない。目の前には華奢な女が一人、正体は分からないが、もとからいなかったことにすればいいだけだ。やることに変わりはない。

 シズカの両の瞳が金色に輝く。

 前面の空間にノイズが走り、集束していく。

 シズカがおもむろに右手を伸ばすと、ノイズは彼女の手の中にスマートフォンのような形で実体化した。同時にシズカの腰にどこからともなくベルトが現れ巻き付く。

「お前たち、楽には死ねないよ……」

 シズカはベルトの中央にスマートフォンミャウドライバーを押し当てて囁くように、キーワードを唱えた。

「変身……!」

 ニャーン

 電子音が鳴り、シズカは全身に光を纏った。

 足元からシズカの身体に沿って無数のラインが延びていき、メタリックな戦闘スーツを形作っていく。

 脚、胸部、腕の装甲に炎のエフェクトとともに濃い紅が差し、炎が赤いスカーフに変化する!

 最後に黒いフェイスマスクが下りると……。

 

「な、何だその姿は!」

 1カメ!2カメ!3カメ!引きカメ!

「時空監察官シズカ。さあ、正義の前に跪きなさい!」

 シズカは台詞にあわせ、首領に向けて挑発の入った差し指をする。

 時空監察官は司法であり執行官でもある。彼等がその場で判断したことは即ち「正義」である!

「ええい、あんなもの見た目だけだ!ねじ伏せろ!」

 さあ、戦いだ!


 ♪ 

 時空を超えろ天空を駆けろこの銀河のため

 真っ紅に燃える愛を君は見たか

 暗い深淵の底に卑劣な罠が待つ

 信じる人々の正義

 王者の正義は真実

 夢を見続けることが私達の幻想ファンタジー

 好きなように生きるわ

 白く輝く銀河で

 時空を超えろ天空を駆けろこの銀河のため

 燃やし尽くせ涙よ乾け明日にはいらない

 時空監察官シズカ!

 時空監察官シズカ!


「さあ、後はお前だけだが?」

 数十人もいた手下たちを瞬く間に一掃し、首領の目の前に無防備に立つシズカ。

「あわわ……」

「言いたいことがあるなら言いなさい」

「お、俺は……」

「聞かないケド」

 シズカはドライバーのパネルを三秒キッチリ押した。ニャーン!

「ギャラクシーキック……」

 炎を纏ったシズカの上段回し蹴りが、首領の頭を強烈に蹴り抜いた。

 十メートルも吹っ飛び、壁に激突して首領は気を失う。

「さすがに爆発はしないわね」

 シズカが変身を解くと、スーツもドライバーも光となって消えていった。


 この人数をどう処理しようか。

 やっちゃって、途方に暮れる。

 この時代の官憲に処理を依頼するわけにもいかない。今の時間の地球には、いるはずのない者達だ。

「結局はこうなるか」

 シズカが手をかざすと、周りで倒れている首領も構成員も、施設も緑の光となって消えていく……。


 全てが消えてしばらく、丁度良いタイミングでスコップが戻ってきた。

「シズカ、大丈夫かい!」

 擦り傷は多少あるようだが無事だったことにシズカはホッとする。 

「ありがとう、スコップ。あの子を避難させてくれたお陰で、思いっきりやれたわ」

 スコップのどん引き顔を、自分への恐怖だととったのか、シズカは言い訳する。

「普段は使わないよ!君は友達だと思ってるし……。ケンカの時は素手でいくから!でも必要な力なんだ。だからいろいろ許されるよね♥」

「完全アウトだよ!」

「どこがよ」

 倫理も衣装も、挿入歌も。全部です、シズカさん。

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