第22話 ほんわか夏休み
「シズカさん、何作ってるの?」
すっかりスイレン達の溜まり場になってしまったシズカハウス。新たに開放された第二エリアは工作室だ。
「君たちで言うところのドローンよ」
「……姉さん、もう隠すこともしないんだな」
因みに、「シズカさん」呼びはスイレンとヤオハチ。「姉さん」呼びは佐久間だ。
「この時代にもあるテクノロジーよ?隠すとか、意味分からないわ」
「そう言うところ、わざととしか思えない」
「もー、佐久間はうるさいな。親父さんに盛り合わせ頼んでるから、二人で貰ってきて。今日も一日いるんでしょ?おやつも何か見繕ってきてよ。ヤオハチ君の分も」
細かいネジをピンセットでプルプルしながら摘まむシズカ。あまり器用ではないようだ。
「あ、スコップも来るんだった。スイレンちゃん、おやつはチョット多めに買ってきて~」
夏休みももうじき終わるこの頃はこのメンバーで過ごすことが多い。山田がいないのは皆物足りないと思っているのだが、いないのは仕方ない。恋に恋する乙女はこんなものだ。
「やっと静かになったわ。スイレンちゃんもこんな所に入り浸ってないで、佐久間を誘って遊びに行けばいいのに……あれ?」
部品が足りない。
「おかしいな、全部あったのに……」
以外と慎重派のシズカは始める前にすべてのパーツをトレイに入れて確認していたのだ。それなのに……。
あれあれ~。極小パーツを探して、床を這い回る。その様子は自分のしっぽを追いかける犬のよう。猫だけど。
「仕方ない……」
電話を取り出したシズカは、リストからある番号を選び、ダイヤルした。
注:発信時のアニメーションが回転するダイヤルなのだ。
「ああ、リュービィ?私、シズカよ。……違うって、そんなわけない。あ゙?切るよ」
掛けたのは貴女だ、シズカ。
「昨日買ったさ、ドローンの組立キット、859番の部品が
見られてるのか?隠しカメラとか。
素っ裸で歩き回ったりはしていないが、一人でくつろぐときにはそれなりに薄着だったりする。
恐怖のあまり自国語で相手を罵るシズカ。とても翻訳できません。シズカさん、このお話は「全年齢向け」です!
「こわいよ!ば~か!」
最後は子供みたいな悪口。相手はご褒美に震えているだろう。
『コンピューター、家中をスキャン。盗聴器とかを探し出せ』
シズカは作業に戻ろうとしたが、勢いを削がれて少し疲れてしまった。
「ん~!続きはご飯の後にしよ……」
テーブルを拭いて、冷たいお茶を準備して。
「昨日浜さんにもらったセロリのお漬け物があったんだ」
シズカは香りの強い野菜は苦手だ。こういう時に出さないとなかなか減らない。
「遅いな」
寿司屋まで往復30分掛からないはず。
「遅いな……どこかでチューでもしてるんじゃない?」
しばらくはおとなしく座っていたが、眠くなってきた。
「チョットだけ……」
座布団の上に丸まって眠ってしまう。
「ただいま~」
「ごめ~ん、シズカさん、遅くなっちゃって」
普通に帰ってきた二人。シズカさんが期待していたようなことは起こらなかったみたいだ。まあね、お互い一方通行じゃ、動きませんよ。
「姉さん……?」
「寝てる……」
テーブルのシズカのいつもの場所で、丸まって寝ている黒髪のお姉さん。
「か、可愛い……」
お気に入りの三つ編みを抱いて、まるでしっぽを抱く猫のように眠っている。
「……」
「……しまった。僕としたことが見とれてしまった!」
「佐久間……まあ、これは仕方ない、か」
「にゃ?……お寿司のにおい」
騒ぎすぎて起こしてしまったか?いや、起こしていいのだが、二人は何故かすごく勿体ないような気になった。
「ああ、お帰り。二人とも。遅かったね~?チューでもしてた?」
「「え?」」
シズカの冗談混じりの問いに、見る見る真っ赤になっていく二人。
「……何その反応?ホントにチューしてた?」
「「チューはしてない!」」
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