第13話 シズカ邸西部会戦!

 シズカは捕まえた蝉を大事に虫かごに詰め込んだ。

「シズカさん、それ何に使うんです?」


「こうやっていっぱいに詰めておくとね、お互いが発する振動で身は柔らかく、余分な脂が抜けて美味しくなるの」

「食べちゃうの!?」

「冗談よ」

 山田は嫌がるし、噂ほどは美味しくなかったしね。

 母国語で呟くシズカさん。でもなんか雰囲気で子供達はすべて察したようだ。

「これは犬除けよ」

 またおかしな事を言い出した。子供達はだんだんシズカさんのパターンが判りかけてきた。

「お隣さんが犬を飼ってるの」

「お隣……教頭先生ですか?」

「そうよ。フレンドリーな犬でね。私を見かけると塀を越えて飛びついてくるの」

 それは怖いだろう。教頭には抗議せねばなるまい。ストーカーもいつの間にか可愛い猫姉さんに魅了されていた。ゆうきのことは別腹だ。

「この庭に入ると領土侵害よ。撃破されても文句は言えない」

 シズカはカゴの蝉達に怪しい粉を振りかける。

「もうじき。浜さんが学校に行って、奥さんが居間で「さすらいます刑事」を見始めると、馬鹿犬はこちらに来る。私の大事なお昼寝の時間を邪魔するために……!」

 シズカさんは待った。

 そしてついウトウトしてしまった時、それは現れた!

「ニャー!」

 シズカの叫び声?で課題から顔を上げる子供。縁側を見ると、シズカが小型犬に飛びかかられているではないか。

 微笑ましく見えるが叫び声からして相当恐怖なのだろう。シズカを助けるため三人は縁側に駆けつける。

「シズカさん!」

 突然表れた人間に驚き、犬はシズカから離れた。

「おのれ!卑怯な獣め!目にもの見せてくれる!」

 シズカは虫かごに飛びつくと、その入れ口を開放した!

「行け!コスモアタッカーセミ隊!順次発進!」

 シズカの号令に合わせ、蝉達が順番にカゴから発進していく。その数36匹!三個航空中隊だ!各隊は上空で編隊を組み陸上の目標に対して波状攻撃を仕掛ける。

「よし、全機(化学)反応弾の使用を許可する!安全装置解除セイフテイーデバイスリリース攻撃開始トツゲキラブハート!」

 要するに蝉のおしっこ攻撃だ。目標は鼻と目。やけに正確な射撃に犬はたまらず暴れ回る。つぎつぎと撃墜されていく蝉達。だが効果は確実にあった。

 数分後、犬はシズカの庭から逃げ出していった。

 戦いを終えた蝉達はカゴではなく近くの木に止まり、傷付いた翼を休めていた。

 未帰還機16。全滅に近い消耗戦であった。

「諸君よくやってくれた。しばらくは哨戒任務にあたってくれ。以上!」

 無表情に満足げなシズカさん。子供達はついていけてない。だよね。

「スコップめ、良い薬を作るじゃないか。追加発注も考えておくか」

 それは山田には見せない戦闘モードシズカさん。当然山田の友人達にも見せてはならない。

「さあ、ワンちゃんも帰ってくれたし、お昼ご飯にしましょう。皆、ひやむぎ好きかな?」

 うっかりシズカさんは、これで誤魔化せてるつもりだ。

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