第33話 せめて形には
最近は団員からの視線に戸惑ってしまう。
今までは舐め回すような、粘ついた視線を感じていたが、そこに熱の様なくすぐったさを感じる物が含まれているのに気づく。
悪くはないのだが、悪感情だけではない熱が混じった視線には慣れず、やりづらさを感じる。
俺はもうすぐ13歳になる。身長は傭兵団内の平均より高くなり体も男になってきた。
毎日の歯並び矯正のおかげか、口元には自信がある。
肌もすべすべで並みの女性には負ける気がしない。
カレアの名は捨てたつもりだが、確かな美容術は受け継いだと思う。
「そこ邪魔だ!…あぁ、なにしてんだ?見下ろしてんじゃねえ!ウチより高くなったからって調子に乗んな!なあ、ラエル坊ちゃま!」
「……う、上目使いのヴァルはいつもと違う魅力がある。足りないのは穏やかさだと思うよ。胸元は…ほら、隠してよ。目に毒だから、ヴァル。」
「…………」
思わずマナを全力で拳に流す所だった。もじもじして服のすそを確認しだしたのを後目に部屋に戻る。後で全員集合だと団長から言われた。雰囲気がいつもと違うため、少し緊張する。
***
全員集合したらしいが、団員が少ないと感じる。
雰囲気が暗い、マキラが顔を手で覆い泣いている。
「集まったな、仲間が旅立っ――――」
団長は皆に伝える。仲間が3人亡くなった、任務での事だと。
新入りと前から居たやつも亡くなった。こういう仕事をしていれば死ぬこともある。
死んだ仲間の物は何も残らなかったと、一緒に任務を受けていたマキラは持ち帰れなかったと、罪を告白するかのように皆に伝える。
「マキラはよくやった。近頃はカレアが領内のレ―ヴァ信者を一掃している。賊に身を移したものがここら辺りにも出没している。皆、警戒しろ。…仲間を改めて送ってやろう。」
亡くなった者の部屋に置いていた私物を外で燃やした。この世界の炎は、黒に近い紫色の炎は、やっぱり綺麗には見えなくて、見続けると胸を締め付けた。
***
アナベルはおしゃれな女性だ。いつも俺で遊ぶが綺麗になったのは間違いなく彼女のおかげだからだ。アクセサリーにも詳しくて特に刺繍などを趣味にしている。
「ラエル、普通に美男ね。…私の男性観が壊れていくの、どうしよう。」
「じゃあ、俺で遊ぶの止めたら?もう近づかないようにするから。」
「殺す気なの!そんな事言ってない!分かるよね?」
「…えぇ、…分かんないです。あと、久しぶりに女性を怖く感じました。」
いきり立ちながらも手つきは繊細で俺の髪の手入れをしてくれている。
魔獣の皮の処理方法を教えて欲しいと、俺もアクセサリーを作ってみたいとお願いする。
さっきまでの雰囲気は無くなり、私は厳しいからと謎のレクチャーが始まった。明日からでお願いと逃げた。
今日の訓練後のストレッチはポリーとだった。
「ポリー後ろ向いて寝転んで欲しい。…俺がいいと言うまで動かないで、いい?」
「いいぜ…ほらって、ラエル!そこ、ダメ、ね…ラエル!」
俺はポリーの太ももの付け根に触れている。ポリーは悶えているのだが、動かないって言ったよね。と言うと止まる。
「ハァ…ハァ、?これにマナを流す?なんか光ってる?なにこれ?」
俺はポリーの手の上のマナタイトを返してもらい、手伝ってもらったお礼を述べた。
ポリーは顔を赤くしたまま「どういう?」と小言でブツブツ言っていた。
***
「どうしたラエル?それは何だ?」
俺は団員の人数分のネックレスを持っていた。
綺麗に処理を施した魔獣の皮にマナタイト結晶を固定した物だ。
「団長、これを一人づつに配りたいと思います。団長のはこれを。」
先日、団長からの訓練を受けた際に鑑定で魔法陣をサークルした。
団長も綺麗な魔法陣を持っていた。…もしかしたら家柄のよい人は魔法か加護があるのかもしれない。
俺は渡したそれにマナを流してもらう。
「これは…光っている?団員分あるのか?…そういう事だな。」
仲間が旅立った時、何も持ち帰れなかったと嘆いていたのを見て思った。
これなら、何かあれば持ち帰りやすいと。それにノワール傭兵団のシンボルとして皆で共有できる物になるのではと。
団長の言葉にうなずきで返事をした。
頼むと言われ、皆に配り説明した。
皆は大変喜んでくれたが何の為の物かを聞いてきた。
俺は言った。これは仲間の証だからと。
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