第19話 復活

なんだこれ?気持ち悪い。


最初に自身の肘をみた感想だった。

皮膚が鱗になったのではなく皮膚の内側、骨?が青い鱗になっている。

上から触っても、感触は皮膚でしかない。というか。


「体調が良い…すごい体が楽なんだ。」


「…とりあえず服は絶対に着て下さい。見せてはだめです…まるで竜…人みたい」

…確かに!と思いながら冷や汗をかいた。


『―――』

『――――――――――』

『――』


「坊ちゃま、隠れていましょう」


至る所で怒声と悲鳴が響いていた。

屋敷と都市を囲う壁の一部が壊れてしまった。多数の民家も倒壊している。

都市のシンボルになっていた時計台も崩れている。


僕とアシエは倒壊していない建物の影で周りを見渡す。


そうして初めて僕以外の男の人を見た。倒れたまま動いていない。

倒壊した家の中に居たのだろう。


多くの人達が崩れた建物から人を救出をしたり、治療行為をしていた。

その中にはラナやイアナもいた。


僕も手伝いに乗り出そうとした。

「ダメです…お願いです。坊ちゃまは隠れて過ごす為にこの都市にいるんです。」


…余所者の僕はただ見ている事しかできなかった。



領主のバネア様は行方不明でラナが主導で救出の陣頭指揮をしていた、他の町に応援の要請もしていた。

最悪なことに魔の森側の壁も壊れている箇所がある。



ネーナさんが黒いマントを持ってこちらに向かってきた。

僕を包んでそのまま走ってネーナさんの家へ向かう。

幸い屋敷から離れていて無事なエリアだった。




アシエが住んでいた時の部屋に泊まらせてもらった。

カレア家に来る前のまましていたらしく。


「あぁっ!坊ちゃまはまだ入らないで、いいですね。」

と言って、急いで片づけていた。


部屋は二人では少し狭い位だったけど、むしろこの位の方がより近くに居れて良かった。


相変わらず二人で眠っている。

アシエの寝顔を眺めて、杖を取り出した。


久しぶりにサークルをしたくなった。

すごくマナが流しやすい。特に左手でサークルをすると驚くほど思い通りの線を刻める。


「坊ちゃま、寝ないんですか?」

アシエが起きてきた。

…アシエになら…僕は鑑定魔法について告白した。


「アシエ、実はね、マナが見えるかもしれない。」


アシエは意味が分からずに微妙な表情で僕の話を聞いた。


右手にマナを込めるとマナの通り道のような物が拡大映像で頭に直接流れる事。

今まで体調が悪かったのは、マナが漏れていて、それも魔法で観えていた事。

昔に大怪我をしたのは姉の魔法陣と自分の魔法陣をサークルしてマナを流したら姉の魔法が暴発したかもしれない事。



ここまでを話した時、眠そうだった顔は真剣な顔に代わっていた。

「坊ちゃまはこの話を誰かにしたことはありますか?」


「アシエだけ、初めてだよ。」


「恐らくですが、魔法ではなく加護と呼ばれるものだと思います。」


加護は他の人には理解されない自身のみ対象のような魔法の事。

嘘を見破る能力、探し物を見つける力等が有名だと。

それらは魔法だと証明が出来ない為、評価されづらく加護と呼ばれる。


「坊ちゃまは何で私だけに話したのですか?」


「アシエならいいと思った…アシエにだけは知ってほしかった。」


「………」

アシエは強く抱きしめてきた。


「大丈夫、誰にも言いません。坊ちゃま、ずっとお側に居りますよ。」


僕はいったんアシエの抱擁から離れた。


いつもなら受け入れていたのでショックを受けている。そんなアシエの前で歯並び矯正の枠を取り出してはめる。


調子がいいので出来ていなかった美容法を再開しようと思った。


アシエは大笑しながら再び僕を抱きしめて横になった。

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