第17話 魔性の女の子

セント市に来てもう半年になる。


僕は9歳をとっくに過ぎていた。

アシエはどんどん大人の女性になっていく。


一緒にいるとドキドキする。まるで別人のように急激に成長している。

マナ量も増えているのだが、違う意味で頭を悩ませる。


「坊ちゃま。そこをどいて下さい。」


今だってアシエは掃除中だが、薄着で無防備だから色々見えてしまう。

こんな事は予想外だ。


「アシエはどんどん綺麗になっていくね…僕から離れないでね。」


「………ユートになりたいんですか?嫌がってもお側にいますよ。」





「疲れた。しんどいよ。男に生まれたかった。」

そう言ってやってきたのはラナの魔士仲間の女性イアナ。


「確かに、いつまでも一緒にいようと思うと男じゃないと。ね、アシエ。」


「……知りません。イアナ姉もさぼりに来ないで。」


「いいじゃない、ちゃんと守っているんだし。」

彼女はネーナの娘でアシエの姉だ。

22歳だと言っていた。魔法はないが凄いマナ量だ。


魔士は騎士の様な者達で魔獣に乗って戦う。

ネア家の魔士は魔の森と呼ばれる魔獣がいる場所で1か月生活する必要があるらしい。

相当厳しいらしく、死者も続出するとの事。選ばれた者のみに許される職業だ。


「おい、イアナ!さぼるな!」


ピクシー人形を持ったラナがイアナの回収に来た。


「ああ、母さんのピクシー人形じゃん。ってラナ、ごめん、戻るよ。」


「ラエル、警戒の為に部屋に置いていくね。」

そう言ってドアの横に置いていく。




また別の日には二人で様子を見に来た。

「二人とも暇なの?」


「違う。ラエル。イアナはそうだけど私は仕事をしているから。」


「おい、こっちを下げるな。アシエもいるしね。」

そう言ってアシエの用意する飲み物を待っている。



「この都市を囲う壁はアーティファクトの様な物。近づきすぎるとマナが乱れる。魔法も効かない。だから魔の森が側に合っても大丈夫なの。」


「すごいね、ラナでも側に行くとダメなの?」


「ええ、明らかに動きが鈍るの。魔物も近づかないようにする。はぐれなんかは別だけど。だから、注意しなければいけないのは都市内の人間よ。いい?」




***


「今日は珍しく天気がいまいち、厚い雲に覆われているわ。」

ラナはそう言いながら今日も訪ねてくる。


「ラナ姉、会話に困ると天気の話をするのは、坊ちゃまも返事に困りますよ。」

そう言いながらアシエは僕とラナに飲み物を用意してくれる。




「魔獣の中には炎を吐き出すもの、起こした風で吹き飛ばしたり出来る魔物が居るの。」


いつもラナは僕の知らない事を教えてくれる。蘊蓄女なのである。

仕事大変でしょ、無理に付き合ってもらわなくてもと言うと不機嫌になった。






――カタ――

―――カタ――カタカタ――

「坊ちゃま!何か変!ピクシー人形が!」


ラナも目を見開き窓から辺りを見渡す。


――――――っ―――っ――っつ―――



―キャア!―

――おいっ!――

――――――逃げろ!―



都市を囲う壁が震えだした。

外からは悲鳴が上がっている。


「何?何が?ラエル、アシエ、こっ…」



――――――ポッ―――ロッ――ッツ―――


雰囲気がおかしい…音がする。ハープ音?



綺麗な音と共に室内に突風が吹き荒れた。



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