第16話 カレア家


僕は自己紹介をした。

言葉使いは分からない、勉強不足だった。

それでも、しっかりしているいい子だと褒めてくれる。


「こんなだけど、ネア家の当主だ。ゆっくりしていってくれると嬉しいよ。」


女性は自身をバネアと名乗った。

車椅子に乗っており、左足が膝辺りから無かった。


「凄いマナ量を感じます。」


「カレア家のボンに言われると嬉しいよ。まぁ、少し上等な家の婆なら普通だよ、これ位はね。バシアもその内私の様になるさ。…あぁ、バシアの母をしているよ。ネア家だけどね。」


そう言って疲れただろうから、休みなと部屋に案内された。


ひ弱な僕は正直限界だった。

アシエは知ったような足取りで一緒に部屋へ入った。

ベットに飛び込みすぐに、眠ってしまう。




「アシエ!久しぶりね!」

知らない女性の声で起きた。

アシエと誰かが抱き合っている。


「坊ちゃま。母のネーナです。」


「ネーナと申します。娘はお役に立てているでしょうか?…本当にソフィ様に似ていらっしゃる…」


「ラエル…です。アシエが居ないと生きていけない位です…ソフィ?」


ネーナさんはずいぶんと小柄な人だった。今のアシエと変わらない位の身長で、それよりもソフィって誰だ?寝起きで頭が回らない。


「…ごめんなさい。アシエ、いつでも訪ねてきてね。ラエル様も。」

そう言いながらネーナさんは屋敷を後にした。



「アシエ。ネーナさんの所に行こう。僕も付いて行っていい?」


「いいえ、坊ちゃま。屋敷から出ないようにしましょう。それよりご飯です。バネア様がお呼びなので行きましょう。」

我慢している様子もなく僕に笑いかけた。




***


「元々ネア家はカレア家を守護する為の家さ。」

バネア様が食事を食べている僕に語りかけてくる。


「ソフィ様がカレア家の当主だったけどね、体があまり強くなくてほとんど寝たきりの様な生活をされていた。それでバシアが当主をしているのさ。私はこのざまだから使えなくてね。」


「ソフィ…さんが僕の本当の母なの?」


「すまないね…病で亡くなってしまってね。バシアとウィーネはソフィ様の侍女をしていて、親友の様な関係でもあったんだ。いつも一緒だった。だからラエル様もお守りしたいのさ。」


「父は?どうしているの。」


「…ソフィ様を追いかけて逝ってしまったよ…カレア家は、もともと子が出来にくい。分家もないんだ。だからラエル様、どうか自身を労って欲しい。婆からのお願いだよ。…本当に美人さんだ。綺麗な…黒髪だね…」


カレア家だけなんだよ、黒髪を持つのは。そう言ってバネア様は家の話を止めた。



***


慣れない部屋の中でアシエと抱き合いながら眠る。

最近アシエから甘い香りがする。


「坊ちゃま、カレア家だからお守りするのではありません。坊ちゃまだからです。大丈夫、ずっとお側に居りますから。」


微睡の中、僕はアシエを強く抱きしめる。それが僕の返事だ。





次の日の朝


アシエはマナ量が多い女性にも堂々としている。

カレア家本邸にいる人達には怖さを感じなかったのかを聞いた。


当然、当主様などは怖かったがもう慣れたと、あと同姓のマナ量に対しては抵抗があり、男性程の恐怖を感じないのではとの事だった。


アシエは有名な話として成人女性のマナ量に対するストレスチェックの様な試しがあった事を教えてくれた。


マナ量が同じくらいの男の子と女の子がどのように恐怖を感じるかを試したと。

結果は男性の方が怖いと強く感じる結果になったそうだ。異性のマナはより強く感じ取ってしまうと。




「アシエ、いつまでの滞在になると思う?」


「バシア様は戦争が終わるまでの滞在をお願いされたと聞いています。その代わりにネア家は戦争に参戦しないはずです。」


「そうなんだ…なんか、王家のゴタゴタに巻き込まれるのはしんどいね。王はどうやって決まるの?」


「基本的には現国王の後継者指名ですが、揉めているようですね。」

理由は分からない、順当にいけばオーゼス王子だが、愚鈍との評価。姉もめちゃくちゃ言っていた。だけど他の王子もほぼ差はないとの事。バックにいる者次第という事だが。


「なんか後押ししている家とかで決まるのかな。」


「それがどちらの王子もレ―ヴァ教の後押しがとても強いんですよ…レ―ヴァ教ってカレア家では評判がよくありませんが、今の王国では影響力が高まっています。」


「じゃあ、誰が王でもレ―ヴァ教の1人勝ち?」


「単純ではないと思いますけど、そう見えてしまいますね。」


「王国はよく続くね。話を聞くと瓦解しそうなのに。」


アシエは苦笑いした。



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