第13話 英雄色を好むのか?
僕は8歳になっていた。
ベット生活は変わらない、マナの漏れが回復する見込みは…ない。
姉は10歳になり、次期当主の風格を持ち始めていた。
「父親?どうしたの?」
「いや、男性に会ったことないんだから、気になるんだ。本邸にいるの?」
母・姉・妹は赤髪と緑の瞳だが僕は黒髪、青い瞳だ。全然特徴が違う。
僕は恐らく父親似なんだと思っている。
「いないわ、男なんて一人も。というか、ラエル以外は多分本邸に来れないでしょ?」
「マナ量的な事で言ってる?」
「それ以外ある?ラエルが思っているより何倍もクソよ男は。」
姉は参戦した際にオーゼス王子を遠くから見たと言った。
「王国の威信にかかわるから言葉を控えるけど、綺麗ではないわ。あと、少しでも思い通りにいかないと周りに辺り散らかしていて、女性が意識せずに少し近づくだけで喚きだす。あれで王になるの?ってずっと思ってた…思ってる。」
姉も大人になったんだと思ったら、言葉を選んでそれなのか?
「急に父親なんて、どうしたの?」
「いや、僕もそのうち婿に出されるとか、政略結婚とかあるんじゃないって思って。」
「…誰かがそんなこと言っているの?ラエル言いなさい!」
「…ごめん、言われてないけど、そうなのかと思って。」
――本気の姉は怖かった。まさかマナを漲らせながら怒るとは思ってなかった。少しだけ漏らした。
「大丈夫よ、他はカレア家に男児がいる事なんて知らない。安心しなさい。」
――おっと、僕の存在は公表されていない?本当に扱いが分からない。
フリーズした僕を見て、姉は恐らく安心したと勘違いしている。
「言ったでしょ。ラエルは大丈夫。何があっても私が守るから。ずっとね。」
***
8歳も半年程が過ぎたころ、王国内での王位継承権問題は激化の一途をたどっていた。
カレア家は王子のどちらも支持せず中立の立場にいる。
王国の防波堤としてエルシャ公国と魔の森に隣接しているのだが、王子二人は無茶苦茶で領地を開けてでも駆けつけろという要望がそれぞれから何回も届いるらしい。
王子達の暴走を止める者はいないのかと姉に聞くのだが
「周りは皆成人女性で、怖がって言う事聞かないんじゃない?戦争中はそう感じた。」
悲しそうに呟く。
「気持ち悪いのは…女の子をたくさん連れているのよ…大人になる前の…ね。」
これは僕も思っていたのだが、この世界の男性の一般性癖がその、馬鹿にしているわけではないのだが、大人前の女の子に対する物が多いと本に書いてあった。
恐らくマナ量が成長していない為、普通に接する事が出来るのが理由だと思う。
僕にはわからない癖なので想像でしかないが。
「大丈夫だよ、姉さん。おっぱい大きくなってきてるしね。」
全力でフォローしたら叩かれた。
「キモ!セクハラ!ってドワーフは言うんでしょ?」
ドワーフよ、そこまで語録を残さなくていいのに…
***
「坊ちゃま、飲み物の好みが変わられましたね。」
前までは甘ければ甘いだけ良くて、程々に酸っぱいが良かった。味という刺激が分かりやすい物を好んでいたが。今は俺の好みである、苦み、深みに変化しつつある。
「アシエが淹れてくれたものは何でも好きなんだけど。」
「…坊ちゃまは女性を誑かす。ユートのようです。」
ドワーフの英雄ユート。
レ―ヴァ教では禁句となっており、必死に彼の軌跡を消そうとしたが、功績とカリスマ性が強すぎた為、口伝で広まり後世にまで残り続けた。
ユートは竜を討ち果たす、大剣で。
この世界、金属製の武器は重宝されていない。マナの通りが悪いから。
最高硬度にしてレ―ヴァ教の選ばれし武器。クリフォトの棍は全てを超えるとされている。
だが、竜には効かない、戦いにもならない。
そんな中ユートは単独で討ち果たした。
…以降の足取りはつかめないが。
ユートはあらゆる女性に好かれたとされている。
女性に好かれる男をユートの様だというのは魅力的な男性だと伝えている事になる。
舞い上がった僕はアシエの目を見つめて
「アシエは綺麗だ。」
普通を装って言い放つ。目をそらさない。
顔を手で仰ぎながら下を向きだしたアシエを見て、勝った!と精神的勝利をする。
静かな日々の中、次の戦争は近づいていた。
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