第12話 このままずっと…
ベットから離れられない。少し動くと目の前が暗くなった。
…意識を失っていたと気づく。その時には笑ってしまった。
自分の事なのに、どうしようもない。
食事も、固形物があまり食べられなくなり、薄味の流動食ばかりになった。
ただ一つだけ良かったと思う事がある。
「はーい。あーん。」
アシエもそうだが、他の侍女やウィーネもあまり怖くなくなった。
何故か分からないが、マナ枯渇のせいでそこまで考えられなくなったのかもしれない。
アシエが側に来ても恐怖、威圧感を感じない。
「キャッ!何を!」
こうして思い切り抱きしめても体が少しも震えないのが良かった。
それに、このままでいれば何もせず、ずっとアシエに甘え続けられるのではと頭の片隅で考えている僕がいる。
自分の内から湧き上がる感情、これは…怒りの感情だ。僕の情けなさを俺は許せない。
「初代王バリオール・ライアンは宝珠に選ばれて今のマヌアート王国となりました。この宝珠はよく物語に出てくる。カーバンクルの落とし物とされています。」
今はアシエから授業を受けている。
2週間前に姉と母は帰ってきた。そして僕を見た姉は崩れ落ちた。
母も痩せ細った僕を見て涙を流した。
それからの二人は時間を作ってよく来るようになる。
「――1年という暦を作ったのはドワーフとされているわ。リエルラの花が12本あるように…あぁ時間を測るアーティファクトよ。
…いい?続けるわよ。で1か月を31日と定めたの。1年は12か月…372日で1週間は7日ね。
なんでもドワーフ達には四季という気候?があったためにそんな暦があったみたいね。…分かるの?ほんと?私はこの辺り覚えづらかったのに…」
「いいか?あまり話したくはないが、男性についてだ。おさらいだが男性は数が少ない、それは生まれた時のマナの量が女よりも少ないからだ…ここまではいいな。マナ量が少ないまま生まれた場合は…死産となる可能性が高い。恐らく10人、いや15人の女に対し男は1人しか無事に生まれてこれない。………ラエル…生まれてきてくれて本当にありがとう。」
***
7歳になった。
ベット生活が当たり前になりつつある。
このままではいけないと少し無理にでも運動をするようにしている。
腕立てなどをすると、力むために体中をマナが多く循環するようになる。
身体強化の様な物だと思う。そうするとマナの漏れ出しが激しくなり気絶してしまう。
自身の出来る限界を理解する事を第一にしている。
マナの生成についてだが、女性は、女の子の日が来るたびにマナ量が増えていく。
恐らくだが、性器にてマナは生成されている物だと考えられる。
男性のマナが増えないとされるのはそこにあるのだと推測できた。
だとしたら、僕のマナ量はほとんど増えないかもしれない。
マナの漏れについても感覚的には変わっていない。
怪我からもうずいぶん経つ。これ以上の回復は見込めそうにない。
…サークルもしていない。その気力も湧かない。
海を見たい…いつだったか、そう思い始めたのに…
カレア家は海に面していない。海を見たいと思っていた。
でもこの体では無理なんじゃないかと諦め始めていた。
夜は窓から外を見上げて過ごすことが増えた。
この世界に月は存在しない。あるのは星の輝きと魔術の光源だけ。
『月がきれいですね』のフレーズも言えないなと思いながら飽きるまで空を眺めている。
魔術も使えず、運動もほとんど出来ない。授業も皆が空き時間の合間にしてくれる。
暇な時間は本を読んでいた。姉が本邸の中で保管されている物を持ってきてくれた。
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かつて空と海があった。繋ぐは一本の木。
海は空を欲した、空を落とし、繋ぐ木を割った。
こうして地は出来る。海は変わらずそこにあった。
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王国には海に面している土地がある。
だが、海についての本があまりない。地理関係の本もあまりない。
…どの本にも海に関わってはいけないと警告する内容の物ばかりだ。
海に潜って出てきた者はいない。海に浮かべばたちまち海獣に襲われる。
エルシャー公国という場所に【最強】の異名を持つ魔法使いが居る。
その者は海より現れし、城を超える8本腕を撃退したとある。
海は近づいてはならないと、竜の世界とまで言われる。
それ以外の海の情報は存在しない、だけど見てみたい。
水平線に陽がかかる瞬間をもう一度と思い眠りにつく。
――俺の夢をみせて欲しい、爺さんの家から何度も見た。海の夢を。
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