第9話 アシエの為に

かつて3体の魔神がいたとされている。


竜人、エルフ、ドワーフ。

魔人達は世界に魔法を掛けた。マナ量の少ない者の命を奪う恐ろしい魔法だ。


男は多くが息絶えていく。マナ量が少ないために。子供もまた息絶えていく。

魔獣も少しづつ息絶えていく。

世界に死が広がっていく。


女神レ―ヴァはこれを打ち倒す。

打ち倒された3人はただの人だったが

世界の仕組みを変えた為、魔神と呼ばれた。


討ち果たした女神はレ―ヴァ教を起こす。

2度と同じ過ちを繰り返さぬように教えを広めるために。

3種の人類は迫害される。レ―ヴァ教が世界を守るために。


だが、魔法は終わってはいない。



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【レ―ヴァの裁き】という、レ―ヴァ教と言う宗教の成り立ちを綴った本だ。


竜人、エルフ、ドワーフそして僕たち人間が居る。

いや、居たとされている。

今は僕たち人間以外いないのだと言われている。


レ―ヴァ教は全てを栽いたと、なので他の人種はもういない。

どんな特徴だったのかすらも分からない。



「兄さま、どうしたの?」


「…ロシエはドワーフってどんな生き物か知ってる?」


「知らない。マナを持たない生き物って言われてる。そんな生物いるんだと思った。」


「…そうなんだ…じゃあ、どうやって魔法使ったんだろうね。」




***

2週間後

「坊ちゃま、ご迷惑をお掛けいたしました。」


「元気になってよかった。」


「…何があったんですか、傷だらけじゃないですか?」


「…心配しすぎて階段から落ちたんだ。」


「申し訳ございません!二度と!もう二…」「ごめん、嘘だから!」

今のアシエに冗談は通じない。怪我の理由を言えない為ごまかした。


アシエのいなかった時の寂しさを埋めるためぎゅっと抱き着く。

「そんなにくっ付かれると何も出来ないですよ。」

僕は何も言わずに黙って引っ付き続ける。


僕にされるがままで居てくれた。




この世界では誕生日を祝う習慣はない。


今日はアシエの誕生日だがいつもと変わらぬ日々になる予定だった。

だけど、僕は温め続けていたサプライズがある。


「アシエ、いつもありがとうね。これを受け取ってほしい。」

アシエの魔法陣を刻んだ結晶が付いた腕輪をプレゼントした。


「…坊ちゃま、これは?」


ずっと練習していたサークルが満足できる水準に達したので、プレゼント用の高純度のマナ結晶にアシエの魔法陣を刻んだものだ。

結晶の名前は分からないけど、薄緑色で宝石にも使われている。


指輪だと大きすぎると思った僕は腕輪にしようとメナに相談、なにかの魔獣の皮を使ってきれいに仕上げてくれた。


「魔術を使うようにマナを流して欲しい。」

腕輪を手渡しながらお願いをした。…ドキドキする。


「……っ…これは…」

結晶にサークルされたアシエの魔法陣はキラキラと綺麗な色を映し出した。


「…っ……、うっ……」

アシエはしゃくりあげながら泣き始めた。

初めて泣き顔を見た。何も考えられずただ抱きしめて頭を撫で続けた。


「ずっとお側にいます。ずっと。」


――照れくさすぎて何も言えない。ぎゅっと強く抱きしめ続けた。





非常に高価な魔術具をプレゼントしてもらったと思ったそうだ。

アシエ専用のブレスレットでアシエだけがマナを流せて綺麗だけど効果はない物だと説明した。


作成するに当たり姉には僕の魔法陣が入ったマナタイトにマナを流してとお願いをした。

姉は意味が分からずマナを流していたがマナは流れなかった。

次に姉の魔法陣入りのマナタイトでも流してもらう。


僕も試した通りの結果で、本人であれば自身の魔法陣にはマナが流せた。

他の人の魔法陣には全くマナが流れない。


姉は何をさせられているのか分かっていない為、ずっと不思議な顔をしている。

その反応が面白く、僕のお願いを聞いてくれた姉に労いをしようと思い。


「お願いを聞いてくれてありがとう!姉様はやっぱり大好きだよ!」

そう言って姉の頬にキスをした。固まる姉が持つマナタイトを奪取り本邸へ帰した。



回復したアシエはいつも以上に動いている。元気なその姿を眺めながら姉は便利だなと考えていた。


ただ、アシエは少しだけ怖くなった。

恐らくマナ量が増えているから。


アシエを避けたくない。ずっと一緒に居たい。そう思って今日も一緒に眠ってもらっている。


怖くても慣れれば問題ない。そう信じて。



いつもの生活が戻ってきた頃、僕は6歳になった。


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