第6話 誰か助けて
2週間後、母から新しい魔術具をプレゼントしてもらった。
ピォリオスの杖というらしい。
言いにくいし名称は杖だな。
僕の想像していた杖のイメージとかけ離れていて透明なシート?みたいな物だった。
紙よりは芯がある。ビニールみたいに破れづらそうだ。
結晶を覆って決まった位置にマナを流すとサークルを始められる。
勝手が違いすぎて慣れが必要だけど、今までよりはるかにマナを流しやすい。
いつもなら倍の時間はかかっていたであろうサークルが出来た。
半分程の時間で、使い慣れていないのに。
これは…腕がなるぜ!
「前の杖はもういらないですよね…」
「アシエの杖は宝物だ。返さないから。」
悲しそうなアシエに我儘を言うと笑ってくれた…やっぱり笑顔が一番いいよ。
「アシエ、いい?」
「…はい…どうぞ…」
そう言ってアシエと一緒にベットで横になる。
最近は一緒に眠っている。
綺麗な寝顔を眺めながら、いつもお世話になっているお礼がしたいと思っていた。プレゼントをしたいなと。
***
「何よ、言いたいことがあるんでしょ。聞いてあげてもいいけど。」
「………」
屋敷に姉と妹が来ていた。
僕は姉を無視して妹に話をする。
「ちょっと待って、あの…」「ロシエ、お願いがある。」
「えっ、お姉ちゃんは。」
「無理だ。役に立たない。」
…うぇっ…っっ…ぐすっ…
後ろがうるさい。
「…何のお願いかな?」
妹は粘ついた笑みを浮かべていた。
(お前も姉に不満があるのか。この際だ、一緒にどうだ?)
アイコンタクトで誘ってみたが引きつった顔になり首を横に振っていた。
「サークル用に結晶が欲しいんだ。マナタイトじゃない、もっと凄い結晶とかないかな?」
「ごめんね。結晶は詳しくないかも。」
「私なら分か…」「メナは分からない?」
元侍女のメナを前よりも怖く感じる。
まさか声がかかるとは思わなかったのだろう。
驚いて笑顔になってと表情が忙しい。
「ラエル様、明日にでも用意してお部屋に届けます。アシエに渡しておくので。」
「ごめん、内緒にしたくて、僕にくれない。」
「…分かりました。明日お渡ししますが、大丈夫でしょうか?」
「うん、お願い。」
怖がる気持ちを抑え込む。
メナはとても僕に気を使っている。
こんなにも思われているのに怖がるのは失礼だ。
***
最近のアシエは先生役が終わるとウトウトしだす。
なのでアシエと一緒に横になり僕自身がアシエの布団を担う。
アシエが眠ったのを見計らってサークルを開始する。
…魔法は無いと検査結果がでたらしいけど僕は自分に魔法の様な能力を感じていた。
この力の事を【鑑定】魔法と定めた。
マナを手に集中すると触れている人のマナの流れをズームで観れる。頭に映像が浮かんでくる。アシエのマナの流れを観ている。
(僕のマナの流れよりも、なんだろう流れが悪い?)
僕とはマナの通り道が違う。
マナの流れが集約している部分が額にあった。魔法陣の様なマナの流れが観える。
それをサークルする。空のマナダイト結晶へ
やっぱりおかしい。
「アシエちょっと休もう。顔色悪いよ。」
「…うぇ?ごめんなさい。何か言いました?」
「アシエ?アシエ…」
「……」
呼びかけても反応が無い。
ここ最近のアシエは体調がおかしい。
下を向いているアシエを覗き込む。
明らかに顔色が悪い。
「…アシエは休んでてね。」
僕は勇気を振り絞って屋敷を出る。誰か助けを呼ぶため。
アシエは僕が守るから!
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