第3話 大人の怖さ

姉は頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「ウェネッ…様!よく分かってもいない魔法を勝手に使ってはいけません!ましてや、ラエル様に見せるなど…何かあったらどうするのです!」


叱られた姉は声を上げて泣き出した。

女性が来てからだ。僕はとてつもない恐怖を感じて体が震えている。

間違いなく漏らしていた。


「大丈夫です、坊ちゃま。」

後ろからささやく声と共に抱きしめられて、そのまま手を握られる。

――暖かい…落ち着く。


「ウェネ様、戻りますよ。…ラエル様、突然押しかけて申し訳ございません。すぐ離れますので。」


「戻りましょう…ね。ウィーネ様、失礼します。」

僕の手を握って歩き出そうとしたアシエに少しだけ抵抗して質問をした。


「ウィーネ…さん?あの、魔法を、その、使える?その、怖くて。」


(貴方を怖く感じます。何故でしょうか?そういう魔法を使えるのですか?)

そう聞こうとしたのだが女性の目を見たら再び怖くなり頭が回らなくなった。

僕は下を向いてしまった。


「………」

驚いている気配と頭にチリチリとした視線を感じられる。


少し間が空き、まずと切り出しながら優しい声色でゆっくりと答えてくれた。

言葉になっていない僕の考えを汲み取ってくれていた。


「私は魔法が使えません。それと怖さですが、その、恐らく大人の女性のマナを怖く感じたのです。ラエル様、本当にすみません。」


「さあ、行きましょう。」

アシエが僕を引っ張って部屋へ戻してくれた。



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『ソフィ様!男の子ですよ!』


『…男!……大丈…夫…なの…ね…』


『はい!女の子と思ったくらいです!』


『そう…』


光を感じる。周囲にはいくつもの気配がある。

その中でも特に気配の強い方へ無意識に瞼を開いた。目が合う。

この人が母なんだと漠然と感じ取った。

そして震えるほどの恐怖が襲った。


――音がする。違う、俺が泣いているのか。

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「ぐっすりでしたね。もうすぐご飯ですよ。」


「どれだけ寝てた?」


「まだ黄緑ですから、金からのお休みでしたし。」


この世界には【リエルラの花】と言う変わった時計がある。

製作者、製造方法不明で破壊するのも困難とされている代物をアーティファクトと呼ぶ。


ガラスの様な物に12色の花が1本ずつ入っており約1時間毎で順番に咲いていく。12本全てが咲き終えると次は1時間毎につぼみとなり、全てがつぼみとなると1日が終わる。


このアーティファクトは11個存在するらしく。所持する家は非常に重宝される。


12時間表示の時計もあるのだが、どれだけ正確とされていてもズレてくるとの事。

傘下の家は10日に1度は時計合わせにくるらしい。


「アシエは怖くなかった?」


「ウィーネ様が怖かったのですか?」


「僕も大きくなったら怖くなくなるかな?」


「…男性は女性が苦手だと聞きます。」


「アシエは怖くないのに。アシエも大きくなったら怖くなるの?」


「…かもしれません。でも、坊ちゃまのお側に…居たいです。」


僕はアシエが一番好き。

だけど、その時が来たら同じ気持ちでいられるだろうか。

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