夜の写真 3
今日の部活は恙なく終わり、私たちは各々下校することとなった。私はいつも通り、あんずちゃんと一緒に下校している。桜並木の花も、もうだいぶ散ってしまって、その代わりに若葉が芽吹いている。葉桜だ。
「でもよかったね。新入生、二人も入ってくれて。くろえちゃんもクリスちゃんも、こよりちゃんのこと好きみたいだし」
好かれているというか、一方的に(特にくろえちゃんに)懐かれているだけのような気がするが。
「そうだね。でも、西之先輩はいただけない。逐一私をからかってきて、いつか痛い目に合わせてやる」
本当に何でもかんでも私に振ってきて、本当に腹が立つ。だいたいさっさと陸上部に復帰すればいいのに。
「……そうだね。それなんだけど……こよりちゃん。……あのね」
突然、あんずちゃんの声のトーンが暗くなった。なにかまずいことを言っただろうか。
「みんなの前で、西之先輩の陸上部の話は、しないほうがいいと思うの……」
あんずちゃんが突然、何かと思えばそんなことを言い出した。
「西之先輩が、私のことからかってくるから。確かに、怪我に気を遣えなかったのは、申し訳ない……かな」
確かにまあ、弱い部分は言わないほうがいいのかもしれない。
それなら、私の弱点を的確についてくる西之先輩はどうかとも思うけど、あんずちゃんがそう言うのなら、まあ仕方がない。
「……そうじゃないの」
声のトーンは低いままで、あんずちゃんは言った。
「料理部の先輩から聞いたんだけど……。西之先輩が休部したのは、確かに怪我が原因らしいんだけど、それだけじゃないらしいの」
それまはるで、私を静かに諭すような声色で。
「西之先輩はね、陸上部では、次期エースを期待された逸材で、インターハイだって狙えるような人だったらしいの。その当時の陸上部のエースだった先輩と、激しく競っていたそうなんだけど……」
私の方を見ないで、あんずちゃんは言った。
「その先輩はね、インターハイの直前に、事故にあって、そのまま……」
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