さよならは言わないで(2023/12/3)

 さよならは言わないでほしかった。

 まだ、出会って間もないというのに。


 アタシはガックリとうつむいていた。

 ランチタイムの公園の地面は、昨日の大雨で、ぬかるんでいた。


「いやぁ……、それはもう、無理でしょ。

 残念だけど、仕方がないよ。それはバイバイするしかないって」

 公園のベンチに並んで座る友人が、気の毒そうにアタシに言う。


 友人の言葉に、アタシはキュッと唇をかんだ。


 と、その時。

 未練がましく、アタシのお腹がぐぅっと鳴った。


「ほら、私のを半分あげるからさ、元気だしな。

 熱いから、気をつけなよ? もう落とさないようにね?」

 友人はそう言いながら、それをアタシに差し出した。


 小さくお礼を言うアタシの足元には、水たまりに浸かった大きな肉まんがプカリと浮いていた。

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