第2話 バカ言ってろ
私は下着を履き、連なる鬼灯の実が描かれた浴衣を着て脱衣所を出て、居間を通り過ぎて窓を開けてベランダへと出た。
すれば、ソファの一種であり、アルミフレームとメッシュの組み合わせのシェーズロングに腰を下ろした君が居たので、私は君の隣に座った。
君は私を一瞥したかと思えば、また夜空へと視線を向けた。
穏やかに流れる熱風とは裏腹に、星がたくさん煌めく夜空は冴え冴えとしていた。
「相変わらず似合わねえな、その浴衣」
「相変わらず身体を横たえさせないねえ、君は。せっかくのシェーズロングが形無しだよ」
「外にずっと置いてるもんに身体を全部預けたくねえ。服も髪が汚れる」
「尻は汚れてもいいって?」
「尻は叩けばいい」
「気に入らないなら片づければいいのに」
「形は気に入っている」
「だったら部屋の中で使えばいいのに」
「これは外のもんだ。それにベランダにはよく映えるが、部屋の中だと映えねえ」
「こだわるねえ」
「おまえの浴衣と同じくらいな。似合わねえって言ってんのに、ずっと着てやがる」
「私は似合っていると思っているからね」
「おまえ。折角風呂に入ったのに、外に出たらまた汗が噴き出して、風呂に入る事になるぞ」
「いいよ別に。今度は君と一緒に入るから」
「入らねえし。ほらメシ作るぞ」
「今日は何?」
「冷や麦、焼き鳥、トマトとキュウリと紫蘇のサラダ」
「ワタシ、ヒヤムギヨリ、ソウメンガ、イイ」
「おまえの素麺、まだ残ってただろ。別々の鍋で湯がけばいいだろうが」
「あ。まだ残ってたっけ。よかったよかった」
「同じ小麦粉から作られてんのに、何で冷や麦が苦手なんだか」
「しょうがないだろ。苦手なんだから」
「まあ、どうでもいいけど」
「はい。本日二度目の冷凍発言頂きました」
「バカ言ってろ」
(2024.8.18)
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