No.7

「――はいこれ持ってって」

「ちょっとぉ、本日の主役なんですけどー」

「全部一人で作ったんですけどぉ??」

「はいナマイキ言いましたすみません」

「…あ、また撮ってる」

「撮るさそりゃ。一大イベントだもん」

「あんま本人が言うことじゃないよそれ、はい、終わり」

「よしゃ」

「…えーと、あ、飲み物飲み物」

「お酒をくれ」

「レモンサワーで良い?」

「えー他になかったっけ」

「レモンかほろよいかスピリタス」

「……は?」

「だから、レモンかほろよいか、スピリタス。あ、シャンメリーもあった」

「何でそんな変な酒が家にあるの」

「貰ったのよ先輩に」

「あなたの先輩何者なのよ……生物学者はこうも変人ばっか揃ってんの?」

「さあ、うちの研究室だけかも。で、どれ?」

「シャンメリーで」

「あらお子様」

「いいじゃん子供の時ぶりだもん。あとでちゃんとお酒も飲むし」

「ああそ。お風呂で開けてね」

「えなんで」

「爆発するじゃんシャンメリーって」

「……えそうなの」

「うん。ばーって」

「ええ怖。じゃあ先開けてくる」

「よろしくー……よっ」


   

――…ん?…んー……――





――ッうっわあ?!?!――

「あら………」


――大丈夫?――

――マジでびっくりしたが……ほんとに爆発するじゃん…――

――ああでも良かったね。そこまでなくなってない――

――えな「くなんの?」

「たまーに半分ほど失われる」

「えーつら………………たまーにって何?」

「よし始めるよゆづるさん」

「待って待って待って待って?!え?普段から飲んでる人の口ぶりだよね?!」

「気の所為気の所為」

「ふゆかさん?!」

「……飲んでるって言ったら?」

「いつ飲んでたの私も入れてほしかった、ってなる……」

「ははっ、じゃあ今度飲むときは起こしてあげるよ」

「やっっっっった……ん?」

「さあさあ始めるよー」

「あ、カメラ」

「いいいい任せて。あ、貴方手洗ってきな」

「ありがと」

「……あ、ねえ帰りにシーザードレッシング持ってきて」

――えー……はーい――




「あやば」



「はーい戻りまして、しょ」

「はい被って」

「わ、え」

「ハッピーバースデー」

「こんな帽子アメリカンしか被らないでしょ」

「アメリカ人を馬鹿にしちゃダメだよ。彼らだって流石にここまで馬鹿げたものは被らないでしょ」

「それこそ馬鹿にしてるでしょ」

「してないしてない。はい、ライター」

「あざす。やはり聖火は自分でつけてこそ」

「いつからオリンピック関係者になったのよ。はい電気消すよ」

「んちょちょちょちょちょ待って」


「あ、きえちゃった」

「つきにくいよねこれ」

「ね。レジ横にあるからよくお世話にはなるけど、よし」

「気済んだ?」

「うん」

「はい、消灯」


「おお……」

「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディアゆーづー」

「んぶっ」

「笑うな。ハッピバースデートゥーユー。はい、消して」

「ふふっ、ふ、」

「ねえ笑いすぎ」

「だって面白いんだもん、ふー」

「はい二十三歳おめでとー」

「やーい」

「はいゆづるさん」

「はいっ」

「二十三歳の抱負は?」

「“全部楽しむ”です!」

「即答ですね。その心は?」

「今年は新しい事がいっぱい始まった年です。まだ慣れないことが多いけど、そのひとつひとつ楽しんでいれば、きっと未来は明るい!そう思っての言葉でございます」

「二十三歳関係ないな」

「酷いな渾身のスピーチを」

「まあいいや、貴方らしいよ」

「へい」

「……はい、どうぞ」

「えっ……なに?」

「誕生日プレゼント」

「ありがとう……私もうなんか頼んでたっけ」

「ううん、これは私が個人的にあげたかったやつ。ほら開けて」

「えーありがた…失礼しまーす」



「……ストラップ……ですか?」

「ビデオカメラ用のね」

「ビデオカメラ用……!」

「このカメラ前と後ろに穴があるじゃん。もしかしてと思って調べたら、専用のストラップが見つかって。これあれば、両手塞がなくてもギリギリ撮れるよねってことで」

「……ふゆちゃん」

「……何」

「ありがとぉぉぉぉぉお!!!」

「うわっ?!何ちょっとやめて!じゃれるな!ふはっねえ擽らないで!!」

「あっははは!えー嬉しい!めっちゃ大事にする!」

「そう……喜んでくれたなら何より……はぁ……」

「よし、ケーキ食べよ」

「先にご飯食べてよ。冷めちゃうでしょ」

「そらまずいな。サラダいただきマース」

「ドレッシングは?」

「シーザーかなー」

「はい」

「ありがと」

「テレビつけていい?」

「いいよー」


「何やってるかな」

「金曜日だからなー金ロー?」

「今日なんだっけ?」

「ジブリじゃん?あ、アリエッティだ」

「おお」

「わたし好きだよアリエッティ」

「よかったね」

「ふゆちゃんジブリ何が好きなの」

「んー、……トトロ?」

「王道」

「あー出た怖いおばちゃん」

「あの人めっちゃ狂気感じるよね」

「それな」

「お肉食べていい?」

「いいよ」

「めっちゃ美味しそうなにこれ」

「市販」

「あーれ」

「実家から送ってもらったちょっといい市販」

「よし、いただきままーす」





「うっっっっっっっっっま」

「でしょ」

「なにこれめっちゃうっっっまい」

「うちでは記念日は毎回これだったから」

「そんなものをわたしのために……?」

「そうだよ分かったから飛びつかないで」

「ううう……ぐ…………」

「ふふっ」





































































































































































































「ヤーあの虫嫌いだわ」

「まじできもい」

「ね」

「お母さんあの顔になるの分かるわ」





























































































































































「あーまってケーキ溶けそう」

「え仕舞わな」

「ラップ頂戴」

「いらんくね?」

「……いっか」

「うん」















































































































































































「ねえさ」

「ん?」

「あの……ゴールデンウィーク、仕事?」

「仕事……ですよ?」

「あの、ちょっとお願いがあるんですけど……いいですか……?」

「……なんです?」

「……ゆづの仕事場…連れてってもらっても、いいですか……?」

「なぜ?!」

「うちの大学院研究室ごとに当番制で新聞出してて、その一部を任されたの。でなんか山並さん優秀だからって一番大きいところ任されちゃって」

「なんだそれ、で、うちに取材って流れ?」

「うん。なんでも手伝うので」

「いいと思うよ。常に人不足だから大歓迎だと思う」

「よっし……それだけです」

「あそう……ねぇまってこれ忘れてた」

「あ、え撮ってたっけ」

「撮ってたよそういえば。めっちゃ無言になっちゃったじゃん」

「意味がもはやないね」

「あ、充電が」

「え、嘘」

「あと一分ももたな――」

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