怖そうで怖くない、だけど少し怖い実話怪談【レッカー車】
手塚エマ
こんなことってある?
とある合宿に参加していた私が日も暮れてから家の事情で帰らなければならなくなった時、友人が車を出して最寄りの駅まで送ってくれることになりました。
ですが特急電車の時刻は車で行っても間に合うか間に合わないかの瀬戸際です。
友人は真っ暗な山道にも関わらず、百キロ超えのスピードで山を下ってくれています。急なカーブが続きます。
「事故るとヤバイから」
間に合わなければ間に合わなかったで仕方がない。
私は彼女を諭しました。けれども間に合わせるというミッションに没入している彼女です。そんな時、車がスピンして大きな半円を描きました。
あっ、崖から落ちる。
と、頭の中で言葉が並んだ瞬間に、ガガガガと、ものすごい音を立てて車が何かに乗り上げた感覚がありました。
それは、私達の車の前に事故った車を運びにきていたレッカー車でした。
少しだけ広場になった脇道にレッカー車が既に来ていて、事故った車を荷台に乗せようとしていた時でした。
私達を乗せた車が荷台から地面に伸ばした鉄製の長板にピタリと乗り入れ、荷台に乗り込むと同時にブレーキがかかりました。
その場にいた人全員がぽか~んです。
そのレッカー車が停まっていなければ、確実に崖から転落していました。
また、あのスピードで走っていたにも関わらず、事故った車を荷台に乗せる長板に、ぴたりと車両がはまるでしょうか。
ぴたりとブレーキがかかるでしょうか。
私達の車は横転もなく荷台に収まり、けが人もありませんでした。
怖そうで怖くない、だけど少し怖い実話怪談【レッカー車】 手塚エマ @ravissante
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