第三話②

 神社につくと、儀式を行った部屋へとそのまま通された。滝行やら小難しい言葉やらを習うのかと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。ぴしり、と姿勢を正した大巫女様と目が合った。




「ようこそ、円さん。そこにお座りなさい。」




 そう声をかけられて、少々警戒しながら示された場所に正座をする。その後ろには凛さんが座る。見張られているようで落ち着かない。だが、何か行動を起こすことができるような雰囲気でもなかった。ただ黙って大巫女様を見つめていると、彼女がふわりとほほ笑んだ。




「それでは、はじめの修練を行います。…まずは、カミ様へご挨拶といたしましょう。」




 彼女がそう言うと、びゅう、と部屋に風が吹き込んだ。思わずぎゅっと目を閉じる。風が落ち着いた気配を感じてぱちぱちと目を瞬かせてみると、大巫女様の横に小さな空気の塊が鎮座していた。昨日見たおどろおどろしい気配とはちがい、「ちょこん」という擬音が似合うサイズ感だ。まじまじと観察していると、不意に大巫女様の声が響く。




「やはり、見えていますね。」


「な、なんとなく、ですが。」


「…昨日は、驚かせてしまったわね。儀式のときは元の大きさになってもらっているの。」




 大巫女様がカミサマから視線を外すと、その存在はまたあやふやな姿になっていく。目を凝らせばなんとか見える程度の薄さになったところで、大巫女様の膝の上へと乗り移ったようだ。

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