第二話①
目が覚めると、日はとっくに西に傾いていた。横を向けば、隣で寝こける兄の姿がある。結局、ほかの人たちはどこにいるのだろうか。耳を澄ましても、無駄に広い屋敷だからか何の音もしなかった。
「はるかおに、」
「おや、おはようございます。」
静かに扉が開かれて、琥珀お兄様が顔を出した。人差し指を立てて、「静かに」の合図。
「ずっとあなたのことを気にして傍を離れなかったので、少し休ませてあげてください。」
「…ほかのみんなは?」
「帰ってきてから、いったん広間で昼寝をしています。大巫女様に言い返したんです。千紘くんが一番疲れていたようですね。」
「ちひろおにいさま…。」
私が小さな声で名前を呼ぶのを、優しい顔で琥珀お兄様は眺めている。そういえば、たぶんだけれど、私をここまで連れてきてくれたのは琥珀お兄様だろう。まずはそのお礼を言わなければならない。
「こはくおにいさま、」
「はい?」
「わたしをはこんでくれて、ありがとう。」
そう言って笑って見せると、琥珀お兄様も不安だったのだろうか、気の抜けた笑顔が返ってくる。そういえば、琥珀お兄様だって、大巫女様に意見したのだ。私よりも年が上な分、その重大さがわかっていたのだろう。申し訳ないことをしたなあと思いつつも、それに対して謝罪するのは何か違う気がする。だから、まあ、今は。とにかく感謝の言葉をかけるしかないのだ。
「今更です。眠ってしまったあなたを運ぶのは、僕の仕事ですからね。」
「…そんなによくねてるかな。」
「ええ。公園で遊んだ後は特に。恭也くんと二人を運ぶのはなかなか大変でした。…最近は、あなただけしか運んでいませんが。」
「わ、わたしだってねることはへったもの。」
「どうでしょう。」
琥珀お兄様が愉快そうに笑う。
「明日から、きっと忙しくなります。夕ご飯まで遥くんと一緒に寝ていなさい。」
「でも…。」
「突然いろいろなこともありましたし。僕たちは僕たちでのんびりします。幸か不幸か、あなたのおうちについては詳しいので。」
そりゃあ、毎日のようにかくれんぼの会場になっていた我が家については、詳しいに違いないけれど。
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