第3話

「え、私がですか?ですが今年は・・・」

杖を持ち襟元に朱色の二重のラインが入ったローブを羽織った小柄の男がソファに腰かけている男に言いかける。

「あぁ先日の会議で二年に一度の遺跡調査が三年に一度になり来年に延びた」

どうしたものかという面持ちでため息をつく男のローブの襟元には同じく朱色のラインが入っている、が男のは三重であった。

エスペリール王国魔法部隊の証であるローブで二重ラインの部隊長と三重ラインの総隊長である。

「ではなぜ遺跡調査に?」

部隊長の男はラクティアという。若くして部隊長になっただけあって総隊長に対しても遠慮がない。

「実はな、会議での決定の前に娘に遺跡調査に連れていく約束をしていたのだよ」

総隊長はブルグ・クレール。魔法部隊をまとめつつエスペリール王国の宮廷魔術師も務めている。

「それでミフィナ様は楽しみにしておられたのですか。なぜかは教えてくれませんでしたが」

ミフィナはブルグの娘であり16歳になる。二年前に王国の魔法学校を卒業し正式に魔法部隊所属になっている。

「遺跡調査に行けるのを楽しみにしていたからな、今さら来年に伸びたとは言えなくなってな。表向きは遺跡調査ではなく遺跡の下見という名目で行ってもらうのだがお目付け役が必要てあろう?」

「なるほど。そういうことでしたら」

「ラスタ村の案内役にはいつも通りに話は通してある。ついでに付近の魔物でも軽く相手にして魔法の修行でもつけてやってくれ。」

「ブルグ様がそう仰るなら」

ラクティアはブルグに一礼して部屋を後にした。


扉が閉まると

「というわけだ。頼んだぞラスタード?」

ソファに座ったまま視線を向けるでもなく独り言のようにブルグは口にした。

「なんだ気付いてたのか。相変わらずだな。説明も省きやがって」

窓際のカーテンからラスタードが出てきて笑いながらブルグに答えた。

「気付けないようでは宮廷魔術師は務まらんよ。それより頼むから正門から堂々ときてくれないか?侵入するように来られると心臓に悪い」

「わざわざ呼ぶから来てやってるんだ。堅いこと言うなよ」

「まったくお前も相変わらずだ。まぁいい、聞いた通りだから頼む」

「わかったよ。初遺跡のお嬢ちゃんの相手はうちのとこの案内役見習いでもいいよな?」

「お前に任せるよ」

「よし、じゃあ帰るわ。またな」

ブルグを背にして軽く手を振りながらラスタードは窓から出ていった。

「だから・・・」

呆れたようにため息を吐いて手にしていた杖を軽く振り窓を閉める。

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