第3話 三才の件
ふわ〜、やっと起きたよ。何時間ぐらい寝たんだろうね? 時計が無いから分からないや。
まあ寝る子は育つって言うし…… ってまだ母親の胎内だったよ…… でも、育つのは間違ってないからいいか。
それじゃ、気を取り直して僕の技能の詳細を見てみようかな。
【技能】
言語完全理解·生活魔法(全)·便利箱·成長促進
古式武術(異世界流)【1/10】
超絶付与魔法【1/10】
えーっと、どれどれ一つ一つ確認だ。
【言語完全理解】
この世界のありとあらゆる言語を完全に理解し、読み、書く事が出来る!
これは便利だ。チートな能力だよね。次はどうかな?
【生活魔法(全)】
(表)
火∶着火(魔力1消費) 種火を作る
水∶飲水(魔力1消費) 2リットルの水を作る
風∶微風(魔力1消費) そよ風を2分間出す
地∶硬化(魔力1消費) 30平方センチ硬くする
光∶清潔(魔力1消費) 光で汚れを落とす
闇∶消音(魔力1消費) 2分間音を消す
氷∶作氷(魔力1消費) コップ一杯の氷を作る
雷∶撃退(魔力1消費) 痴漢撃退
無∶強化(魔力1消費) 肉体を強化する
(裏)
火風∶温風(魔力2消費) ドラーイヤー
火水∶温水(魔力2消費) シャーワー
水光∶治癒(魔力2消費) パワーパット
水地∶土台(魔力2消費) ブロック
闇氷∶冷凍(魔力2消費) クーラボックス
氷無∶冷却(魔力2消費) アイスキューブ
地無∶頑丈(魔力2消費) ウルトラジュラルミン
風地無∶箱物(魔力3消費) フォルダー
光闇無∶治療(魔力3消費) スーパードクター
火水光雷∶温泉(魔力4消費) エモキュート
水風地無∶耐衝(魔力4消費) オメガゲル
水風地光闇無∶耐全(魔力6消費) バリアー
こ、これって生活魔法って言えるのかな? 何だか戦闘にも使えそうな魔法がチラホラ見えるんだけど…… 消費魔力が少ないから生活魔法なのかな? その中でも温泉って気になるね。大きくなったら直ぐに発動してみよう! 呪文名がちょっとアレだけどね。
【便利箱】
何でも入れられる便利な箱
うん、単純明快な説明だったよ。生活魔法のフォルダーとは違うのかな? そう思ったら説明が増えたよ。
(裏)生活魔法のフォルダーを併用すれば整理整頓も簡単に出来る。
だって。フォルダーってこうやって使えば良いんだね。分かって良かったよ。
【成長促進】
自身の体力、気力、魔力を従来より三倍早く成長させる事が出来る。人にかける場合は二倍となる。
また植物などの育成にも効果を発揮する。
凄いね。僕自身なら三倍、人にかけても二倍で成長させられるなんて!
更には植物だ! これはチートだよね。野菜、果物なんかの育成を早められるんだからね。食料確保の手段が多いのは助かるよ。次は……
【古式武術(異世界流)】
対人、対獣、対妖怪、対化性の古式武術を異世界流に組み替えた武術。その武術を極めれば心技体の全てが神に匹敵する。
なお【1/10】は熟練度を表す。
ほほう〜、なるほど、なるほど。僕が老師から学んだ武術を異世界用に組み替えたと…… うん、良く分からないや。実際に使ってみないとね。
熟練度は分かるよ。産まれて普通に動けるようになったら基本の型から始めよう。で、最後は
【超絶付与魔法】
ありとあらゆるモノに生活魔法(全)と便利箱を付与する事が可能。付与対象には
(例)
スライムの聖魔石に生活魔法、火水シャワーを付与すると効果時間は半日。
同じくオークの聖魔石に付与すると効果時間は三日となる。
強い魔物や魔獣の聖魔石ほど効果時間は長くなる。また、神魔石ならばとても長い効果時間を得られる。(凡そ二百年稼動する)
また入れ物(袋や倉庫)に便利箱を付与した場合は入れ物の大きさにより容量が変わる。馬車や部屋に付与する際には宝石を使用すればその空間を広げる事が可能になる。
(例)
サファイア、ルビーならば空間を二倍に。エメラルドならば空間を四倍に。ダイヤモンドならば空間を十倍に広げる事が可能。
付与の際に必要な消費魔力は全て5である。
なお【1/10】は熟練度を表す。
うん、アレだね。コレで僕に家電を作れとヴェーナース様が言ってるんだね。それ以外に考えられないよ。
でも…… 僕は図画工作が苦手だったからなぁ…… 箱物はドワーフの人に頼まないとダメだね。
って、アレ? 何だか体が引っ張られるような……
えっ!? もう産まれるの? 三ヶ月経ったの? まさか技能について詳しく見てたら三ヶ月経ってたなんて!? ええい!! でもそれならそれで良いや!!
僕は異世界でカナデちゃんを守れるように強くなるっ!! その強い意志を持って僕は光の方向へと進んだんだ。
「おぎゃーっ、おぎゃーっ!?」
「奥様、良く頑張りなすったの。元気な男の子じゃ、どれどれ、産湯にてキレイにしてやるでな、ほっほっ、ほんに元気な子じゃて……」
「エレイラ、有難う。アナタのお陰で今回も無事に出産出来たわ」
「ほっほっほっ、何を仰るやら。全ては奥様とこの子の頑張りじゃて。あたしゃほんの少しだけお手伝いしてるだけじゃて」
こうして、僕、カナタ·イーアサークは無事に異世界に転生したんだ。
僕は今、口福を味わってます。
母上のおっぱいです。一所懸命に吸うと出てくる甘い甘いご飯が僕をすくすくと成長させてくれてます。
ちなみにですが、胎内での気力の増幅には結果的に上手く行ってました。何もしてなかったって? そんな事はありません。三ヶ月もの長きにわたって自分の技能の詳細を知るために頑張っていたんです。お陰で気力は大きく成長しました。
で、僕は今は技能の【成長促進】を発動してます。おっぱいを飲む時に発動していると、成長が早くなると気付いたからです。
それ以外の時には発動しても効果は得られませんでした。まあ、ご飯のとき以外はほぼ寝てたので仕方ありません。
僕は一才になりました。やりました! 一才の時点で立って、まだ少しフラつきますが歩けるようになったんです。コレには母上だけでなく、父上や兄上にも驚かれました。姉上は喜んでくれました。
僕は卒乳が早まるようです。それだけが残念でなりません……
僕は二才になりました。古式武術(異世界流)の熟練度も【3/10】となってます。着々とカナデちゃんをお迎えする準備が進んでます。
残念ながら超絶付与魔法の熟練度は【1/10】のままです。何かに付与して誰かにバレると困るからです。
というのもこの世界では五才の時に受ける授けの儀を経てから技能が使用可能になるというのが一般常識らしいので…… 僕はまだ二才ですからバンバン使用する訳にはいきません。
そうでなくても両親や兄姉は親バカなので……
「カナタは凄いな! 私が二才の頃は本なんて読めなかったぞ!」
「カナタは偉いわね。ちゃんとお花にお水を上げられるんだから」
「カナタは将来は僕の代わりにこの領地を治めるに違いないよ!!」
「カナくんは、ずーっと独身でお姉ちゃんと一緒に暮らそうね!」
父上、ごめんなさい。僕も前世では二才の時は本なんて読めませんでした。
母上、水やりのついでに隠れて古式武術の稽古をしてるのは内緒です。
兄上、何を仰ってるんですか!? 僕は領地を継ぐつもりは無いですよ。
姉上…… 前世では
僕はみんなからの言葉を笑顔でスルーしておきました。それにしても一つだけ懸念が……
僕も二才半ばを過ぎたのですが、一向に母上のお腹が大きくなりません…… カナデちゃんはいったい……
ハッ!! も、もしや父上の浮気ですかっ!?
侍女ですか? それとも何処かのご令嬢ですか? なんて僕は三才になるまでとても不安な気持ちで過ごしたのです。
そして、僕は三才になりました。
その日、母上の妹であるサラサ叔母様がやって来ました。出産の為に姉である母上の元に来られたそうです。
僕を取り上げた産婆のエレイラさんがお目当てらしいです。サラサ叔母様のご主人であるラーメール子爵もご一緒です。
そして、サラサ叔母様は一人の女の子をご出産になり、その子にカナデと名付けられました……
う〜ん…… カナデちゃんが産まれるのは僕にかかってるってヴェーナース様が言ってたけど、特に僕は何もしなかったけどなぁ。まあそれは良いや。
それにしても、まさかの従妹でしたよ!!
あの時にヴェーナース様と相談してたのはこういう事だったんですね。でも何故? 僕と
もしそうだったら傷つくなぁ……
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