第6話 一緒にお風呂入ろっか……♡


 SE:お湯が湯船に流れ込む音

 SE:虫の音(鈴虫)


 (ヒロイン声、左から、至近距離、ささやき)

「あ……起きた?」


「ちょっと前に日が暮れたところ」

「キミ、あのあと教会でぐっすり眠っちゃって……」

「たくさん歩いたから、疲れてたんだね」

「ううん、気にしないで?」

「かわいい寝顔、堪能させてもらったから……ふふ♡」

「ん? ここ?」


 (イタズラっぽく)

「ふふ……どこでしょう?」


 SE:お湯が湯船に流れ込む音

 

「家の近くなんだけどね?」

「見える? ほら、あそこ……水が湧いてるでしょ?」

「湯気が出てるでしょ?」

「あれ、温泉なんだ」


 (ちょっぴり自慢げに)

「そうなの。いつでも、入り放題」

「わたしがこの森に住むことを決めた理由のひとつ、なの」


「あの、それでね……?」


 (恐る恐るといった感じで)

「も、もし、キミがイヤじゃなかったら、なんだけど……」

「その……」

「順番に入ってたら時間がかかるし……」

「だから……ね」

「一緒に温泉……入らない……?」


 (慌ててごまかす感じで)

「な、なぁーんて……」

「……ご、ごめんね、気にしないで?」

「獣人と一緒にお風呂なんて、嫌に決まってるよね……」


 (ヒロイン、その場を立ち去ろうとする)

 (ヒロイン声、遠ざかる)

 SE:足音、数歩だけ

 

「あはは……ごめんね……」

「わたし、そこで待ってるから、終わったら——」


 (主人公がヒロインの言葉を否定する。ヒロイン、驚いて立ち止まる)

 (驚いてハッとした様子で)

「!」


 SE:足音、近づく

 (申し訳なさそうに)

 (ヒロイン声、正面から、近距離)

「あ、ご、ごめん……」

「そうだったね……キミは、そういう子だったね……」

「ごめ……あ、ちがう、そうじゃないね……」


 (すこし間を開けて、愛おしそうに)

 (ヒロイン声、正面から、至近距離)

「ありがと」


 (ヒロイン、主人公の手を引く)

「ふふ……それじゃ、改めて……」


 (ヒロイン声、右から、至近距離、ささやき)

「一緒にお風呂入ろっか……♡」


 SE:石の上を歩く足音


「あ、えっと……どうしようかな……」

「じゃあ、わたしが先に脱いで入るから」

「わたしが入ったら、キミが脱いで入る……それでいい?」

「うん、あの、足元滑りやすくて……」

「わたしが先に入ってた方が、いろいろ安全だと思うから」

「あ、う、うん……そだね、むこう、向いててくれるかな……」


 SE:布ずれの音

 SE:石の上を歩く、裸足の足音

 SE:水音


「……ふぅ〜」

「あ、ごめん、もうこっち向いて大丈夫」

「着替えていいよ?」


 SE:布ずれの音

 

 (きょとんとした感じで)

「……え? なんでこっち見てるかって……?」

「だって、滑らない場所教えるには、見てないと……」


 (ハッと気づいた感じ、慌てた感じで)

「……あ」

「あ、あのっ、だ、だいじょうぶ! 暗いから! 暗くてなにも見えないから!」

「あ、いや、何も見えないと、ダメなんだけど……」

「ええっと、ううん……」


 (ヒロイン、言い訳を諦めて強引に話を進める)

「だ、だいじょうぶだから!」


 (ねだるような感じで)

「はやく、いっしょに入ろ? ね?」


「おいで……♡ あ、そこの石、気をつけて、すごく滑りやすいから」

「そうそう、そこを通って……」


 (ヒロイン、立ち上がって主人公に手を差し伸べる)

 SE:水音

 (ヒロイン声、正面から、至近距離)

「どうぞ」


 SE:水音

 (リラックスした声で)

 (ヒロイン声、右から、至近距離)

「ふぅ〜……きもちいいね〜……」

「あれ? どうしたの……?」


 (ハッと思い出した感じで)

「あっ!」

 

 (慌てた声で)

「ごめん、そこ熱いよねっ?」


「こっち来て……大丈夫だった?」

「そうだった……」

「ここ、ちょうどいい温度の場所がすごく狭くて……」

「いつもひとりで入ってたから、忘れてた……」

「あっ、そっちは逆に冷たくて……」

「……ひゃっ」


 (しばらくバシャバシャと動き回る主人公とヒロイン)

 SE:水音

 SE:虫の音


 (ヒロイン声、背後から、密着)

「ごめんね……? こんな、うしろから抱っこするみたいな形で……」

「……そ、そう? なら、よかった……」


 (ヒロイン声、左背後から、密着、ささやき)

「ふふ……♡」

「ちょっと狭いけど、なんだか落ち着くね……♡」


「え? キミは、そうでもない……?」

「ドキドキする……?」

「ふふ……♡ 男の子だもんね……?」

「どれどれ……?」


 SE:水音

 (ヒロイン、主人公の背中に耳を当てる)

 (ヒロイン声、背後から、密着、ささやき)

「あ……ホントだ……」

「トクトクトクトクって……早鐘打ってるみたい……」

「かわいい音……ずっと聴いてたくなるな……」

「ふふ♡ くすぐったい?」

「……そうだ」


 (ヒロイン声、右から、密着、ささやき)

「こんどは、わたしの音、聴いてみる……?」


 (ヒロイン、主人公を胸にかき抱く。主人公、右耳をヒロイン胸に付ける)

 SE:水音

 (ヒロイン声、左から、密着、ささやき)

「どうかな……? 聞こえる……?」


 SE:ヒロイン心音、ゆったりとしたペース(右から)


「いい子、いい子……♡」

「しっかりあったまろうね……♡」


 (ヒロイン、お湯をすくって主人公の身体にかける)

 SE:水音


 (ヒロイン声、左から、密着、ささやき)

「ふふ♡ ぎゅ〜……♡」

「かわぃ……♡」


 SE:ヒロイン心音、ペース早まる


 (ヒロイン声、左から、密着、ささやき)

「ん……、すこし、わたしもドキドキしてきた……」

「くっ付き過ぎちゃったかな……?」

「でも……ね? ふふ♡」

「もうちょっと、こうしてよっか……♡」


 SE:ヒロインの心音、やや早め

 SE:お湯が湯船に流れ込む音


 (ヒロイン声、左から、密着、ささやき)

 (不安をにじませた感じで)

「ずっと、キミとこうしていられたらいいのに……」


 (ヒロイン声、左から、密着、ささやき)

「朝、すこし話したよね……?」

「わたし、故郷を追い出されてるって……」

「あの話の続きなんだけど……」

「わたしの故郷ではね、獣人と人が、あんまり仲良くなかったの」

「土地の領主さまは、人だったの」

「それでね、ある日、領主さまの子どもが夜になっても戻らないことがあって」

「獣人のみんなは、関わろうとしなかったけど、わたしは、心配で……」

「その頃からわたし、よく森に入ってたから、もしかしたらそこかもって」

「森の奥を探したら、案の定、そこで見つけて」

「おんぶして、街まで連れていったの」

「そうしたらね……、わたしがその子をさらったんじゃないかって疑われて……」

「……あはは、そうだよね。そんなわけ、ないのにね……」

「でも、誰も話を聞いてくれなくて……」

「獣人のみんなも、わたしが余計なことをしたって、言って……」

「わたしのせいで、みんながいがみ合うのが、嫌で……」

「だからわたしは、自分から故郷を出たの」

「ちょっと、ウソついちゃった。追い出された、なんて……」

「わたしから、逃げ出したのに……」


 SE:水音

 (ヒロイン声、正面から、密着)

「あのね……」

「雨の中でキミを見つけたとき……あのときのことが頭をよぎったの」

「また、嫌なことが起きるかもしれないって……」

「だから……あのときは冷たく当たって、ごめんね」


「キミはわたしのこと怖がらないって知って、うれしかった……」

「だから思わず、一緒に暮らさないか、って……」

「キミが頷いてくれたのも、すごく、すごくすごく、うれしかったんだよ?」


 (不安をにじませた感じで)

「でも……」

「また、前みたいなことが起きるかもしれない」

「だったらそうなる前に離れたほうが、幸せなのかもって」


 (優しい声で、幸せそうに)

「でもね……?」

「キミと一緒にいると……」

「たった、ほんの少しの時間だったのに……」

「すごく、あったかくて、やわらかくて、うれしい気持ちになって……」

「気づいたの」

「わたし、キミと一緒だから、幸せなんだ、って」

「だから、わたし……」


 (ヒロイン声、正面から、密着、ささやき)

 (泣き出しそうな感じで)

「キミと、離れたくない」

「これからもっとたくさんの時間を、キミと過ごしたい……」

「たくさんの季節を、キミと一緒に」


 (ヒロイン声、正面から、密着)

「わたしばっかり、一方的にしゃべってごめんね……」

「……え? そ、そうかな? そんなに、わたし謝ってばっかり?」

「ありがとう……って、どうして、キミが……」

「もしかして……」

「キミも、同じように、思ってくれるの……?」


 (いまにも泣き出しそうな感じで、嬉しそうに)

「ほんとに……?」


 (嗚咽を噛み殺しながら)

「ふふ、なんでだろ……うれしいのに、涙、とまんないよ……」


「……ね、もう一回、ぎゅ〜ってしても、いい?」

「ふふ、ありがと」


 SE:水音

 (ヒロイン、主人公を抱き締める)

 (ヒロイン声、右から、密着、ささやき)

「一緒に幸せになろうね……♡」

「だいすきだよ♡」

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