第2話 「なんで裸?」って……だって、服脱がないと干せないでしょ?

 SE:隙間風の音

 SE:雨音、ときおり遠雷が混じる


「……くしゅんっ!」

「さむ……」

「ごめん、火、焚くね……」


 SE:薪がぶつかり合う音

 SE:枯草がこすれるカサカサした音

 (ヒロイン、暖炉の埋め火から火を熾す)


 (熾火に息を吹きかけるヒロイン。細く、やさしく、長く吹きかける)

 SE:枯草に火がつくパチパチとはぜる音


「けほっ、んんっ」


 SE:薪がぶつかる音

 SE:薪が燃える、パチパチ、シューシューという音

 SE:金属音(ヒロインがスープの鍋を暖炉の火にかけている)


「これでよし」

「さて、じゃあ濡れた服を乾かさないと」

 

 SE:ヒロイン足音、遠ざかる

 SE:戸棚を開ける音、カチャカチャと物音


 (ヒロイン声、後方、やや遠くから)

「服、脱いじゃって。いま干せるようにするから」


 SE:ヒロイン足音、近づく

 

「どうしたの? はやく脱いで。風邪引くよ」

「ほら、はやく……」

「あぁ、手がかじかんで……」

「まったく、こんな雨の日に森に入ったりするから」


 (ヒロインが主人公のとなりにしゃがむ)

 (ヒロイン声、右から、至近距離)

「ほら、こっち向いて。ボタン外してあげるから」

 

 (ヒロイン声、正面、至近距離)

「ひとつ、ふたつ、みっつ……はい、取れた。腕上げて~」


 SE:衣ずれの音


「よし。じゃあこの毛布かぶってて」


 SE:ヒロイン足音、遠ざかる

 SE:バサバサと濡れた服を払う音

 SE:ヒロイン足音、近づく


 (ヒロイン声、後ろから)

「ちょっとそっち寄ってくれる?」


 (きょとんとした様子で)

「わ、どうしたの? おっきな声出して……」


 (濡れた服を脱いで、下着姿になっているヒロイン)

 (ヒロイン声、右から)

「「なんで裸」って……だって、わたしもびしょ濡れだったから」

「脱がないと干せないでしょ?」

「それに、ちゃんと下着は着てるし……」

「……どうしたの? そんなに慌てて」


 (不思議そうな声で。少しずつ驚きと焦りが混ざり始める)

「見た目は子どもでも、中身は大人……?」

「え? キミが?」

「え……っと……?」


 (ヒロイン、体を腕で抱いてしゃがみ込む)

 (ヒロイン声、右から、至近距離)

「……きゃぁっ!」

 

 (主人公、ヒロインから顔を逸らす)

 (ヒロイン声、後ろから、至近距離)

 (動揺した声で)

「そっ、そういうことは、早く言って欲しかったかな……」


 (ヒロインひとり言)

「大人びた子だなって思ったら、どうりで……」


 (困ったような、恥じるような声で)

「あはは……変なもの見せちゃったね……ごめん」


 (呆然と声で)

「……え? 綺麗……? 見蕩みとれた……?」


 (照れを隠した様子で)

「からかわないで……そんな冗談言われても、困る……」

「というか……寒いから、入れて?」


 (照れをごまかすように、やや早口で)

「……どこに?って、キミが包まってる毛布に決まってるでしょ。一枚しかないの」

「キミの中身が大人だろうと子どもだろうと……」

「体がちっちゃいなら、一緒に暖まった方が効率いいでしょ?」


 (ヒロイン声、右から、密着、囁き)

「ほら、はやく……入れて?」


 SE:布ずれの音

 (主人公が包まった毛布に潜り込むヒロイン)


 (毛布の中でヒロインが主人公を体の前で抱きかかえる)

 (ヒロイン声、背後から、密着、ささやき)

「ぷはぁ。ん。こっちおいで。ほら、わたしの前の方に……」

「ね、ちょうどぴったりだったでしょ?」


 SE:干した服から水が滴り落ちる音

 SE:炭が燃える、キンキン、という金属質な音

 SE:かすかに、トクトクと脈拍の音


 (申し訳なさそうに)

 (ヒロイン声、右から、密着)

「ごめん、わたしの体、冷たいよね」

「……いや、キミは謝らなくていいの」

「雨の中森を見回ってた、わたしのせいだから」

「でもそれで、キミを見つけられたんだから、良かったでしょ?」

「だからもう謝らないで?」


 (クスリと笑って)

「……いや、このくらいで風邪なんて引かないよ。獣人は体が丈夫なの」

「……そんなに心配しなくても」

「キミにできること? じゃあ……」


 (ヒロインが主人公の左肩に顔を乗せる。頬と頬が触れる距離)

 (ヒロイン声、左から、密着、ささやき)

「このまま、キミで暖まらせてもらっても、いいかな……?」

「あ……」


 (すこし不安げな声で)

「くっ付くの、嫌だった……?」


 (安堵した声で)

「ふふ、そう? よかった」

「やさしいね、ありがと」


 (リラックスした声で)

 (密着、ささやき)

「あったかい……」

「こうしてると、なんだか子どもの頃に戻ったみたい……」

「わたしね、妹と弟が多かったから、こうやって」

「下の子たちを抱っこして寝るのが好きだったんだ……」


 (からかうような声で)

 (密着、ささやき)

「ふふ、そうだった。キミは大人なんだっけ?」

「でも、どうせ子どもに戻っちゃったなら……」

「いっそわたしの弟に、なっちゃう? ……ふふ」

「そうやってほっぺた膨らませるのもあの子たちにそっくり」

「……かわい♡」


 SE:強くなってきた風が窓ガラスを揺らす音

 SE:雨粒が窓ガラスを叩く音


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