加護が【自給自足】で追放された僕は自由に生きる

霞千人(かすみ せんと)

第1話 巻き込まれ召喚

 俺の人生は運から見放された人生だった。数字選択式宝くじで最初1等になるはずの数字を選んだのにそれを止めて3等の数字を選んでしまったり、1等の数字を選んだのに雨だったので買いにいかずにみすみす1等をのがしてしまったりそんなことが何度も有った。そして今、不運の極みともいうべき異世界に巻き込まれ召喚という現実にさらされている。


会社帰りの電車内は、俺以外はどこかの高校生達だらけだった。

それがいきなり不気味な音と共に神秘的な光に包まれた次の瞬間、小説で読んだ、勇者召喚の現場に居た。

当然ながら、俺が勇者な訳も無く、いわゆる巻き込まれ召喚だと一瞬で自覚した。


 しかも神様の加護が【自給自足】と言う魔王討伐に必要なものではなかった。余計な者を召喚してしまった国王はこれ幸いと、

「なるほど、その加護ならどこへ行っても自分で生きていけるだろう。農耕機具と農作物の種や種芋を用意してやるのでそれを持って新天地開発に取り組むことを許可する。開拓した土地はそなたの物に出来る故励むが良い」


詳しい説明抜きで僕は未開の地に厄介ばらいで転移させられた。


国王から貰ったマジックバッグに入っていた子供の落書きみたいな地図では、ここはマルテウス王国の最南東の辺境の地で、国有地の最果てに有るアテルイ村の【モスタの森】らしい。

地図ではもっと東には海が有ってそこに流れる川が有る。


なにはともあれとにかくその川を探そう。飲み水と農業には水が必要だと思うからだ。

僕は歩き出した。手には鎌を持って、腰には手斧を下げている。

歩くのに邪魔な雑草や邪魔な木々を切り倒しながら川を求めて歩いていると角の生えたウサギが飛び出してきた。僕の姿を見ても逃げずに角を突き刺そうと飛び跳ねて来た。

思わず持っていた鎌をウサギに振り下ろした。

ギャッと叫んで息絶えた。初めて生き物を殺した感触に手が震えて止まらない。


其の後も1羽倒したところで

『おめでとうございます。ホワイトホーンラビット2羽の討伐に成功したので、レベルが5になりました。成功報酬として、【魔法収納空間(マジックボックス)】【ステータス確認】のスキルが使える様になりました』

と頭の中に女性の声が聞こえた。すると倒したウサギの姿が消えて『マジックボックスにホワイトホーンラビットを収納しました。解体可能です。解体しますか?』

と訊いて来たのではいと思った。

『解体出来ました。リストを確認しますか?』

はい。

マジックボックス内収納品一覧が脳内に提示された。


ホワイトホーンラビットの肉3㎏

ホワイトホーンラビットの皮1枚

ホワイトホーンラビットの魔石1個

ホワイトホーンラビットの眼球2個

ホワイトホーンラビットの内臓は堆肥製造空間に収納されました。完成した時にリストに表示されます』

流石、自給自足だ,肥料も自動で作れるようだ。


ステータス画面を見ると


菅山徹(すがやまとおる)召喚前 23歳

現在 13歳 レベル5 名前トオル

種族 ハーフドワーフ

身長160㎝体重60㎏

生存力 A

魔力  A


(種族がハーフドワーフと言うのを見て嗚呼、俺あまり身長が伸びないのかななんて思っていた。突っ込む所が違うかも知れないんだけれど)


称号 勇者召喚に巻き込まれて城から追放された者。


ミレーナ女神の加護

【自給自足】【異世界言語 読み書き計算会話】【超幸運】(召喚前が【絶不運】だったので神の同情を誘った結果の加護である)

【身体精神異常皆無】(呪いも毒も効かない不老不死に近い身体になった)


加護から派生したスキル

【解体、時間停止、堆肥製造機能付きのマジックボックス】

【ステータス確認】(この世界にはステータスと言う概念が無い。トオルだけが自分と他人のステータスを確認できる。強さの基準は加護の種類による)


魔物を討伐して、森を邪魔な木や草を伐採除去しつつ走行したことによって【自給自足】に必要なスキルを取得しました。


農業用のスキル

【怪力】【高体力】【高持久力(スタミナ)】


食肉補充用魔物討伐スキル

【鎌使い】【手斧使い】【投擲】【槍使い】【剣使い】

【釣り】【俊敏】


有用食物探索スキル

【有用食物探査(食用植物、薬用植物など)】【鑑定】



【生活魔法全般】

火、水、浄化、清掃、風、植物、土


【治癒、治療】(自分にだけではなく他人にも効果あり)

(生活魔法は魔力を込める量で強さが変わる。攻撃魔法に転用可能)


【調薬スキル】

ポーション作成、丸薬作成、薬草採取、薬草栽培


【建築、工作スキル】【資源鉱脈発見発掘】

【錬金術】、【鍛冶職人】、【大工職人】


【時空間魔法】習得にはレベル10が必要条件。


等の有能なスキルを手に入れていた。これって楽々スローライフ出来るんじゃない?

俺はわくわく感を押さえきれなかった。


ピロンとスマホでよく聞く通知音が聞こえたのでスマホを見ると1件のメールが入っていた。

送信元は【君のマドンナ・ミレーナ女神】だった。ふざけた名前だが俺にとってはありがたい加護をくれた女神様(多分)だと思って文面を確認した。


無事にレベルアップ出来たみたいね。今の君は13歳だから自分の事は僕と言った方がいいよ。名前は名字無しのトオルよ。

マジックボックスの中に紹介状を入れて置いたからアテルイ村の村長に挨拶に行って【モスタの森】に住む許可を貰ってね。そこで様々なクエストが発生すると思うから、その度に自分の能力を確認してね。その後森に戻って拠点を確保するといいわ。焦らずゆっくりとスローライフを楽しむといいわ。

追伸

時々メールするからこのスマホはマジックボックスに入れて置いてね、その間に充電出来るわよ。それじゃあねーバイバイ。


魔法で水を出せることを確認したので喉を潤して、まず先にメールに従ってアテルイ村の村長さんを訪ねてみようと決心した。この時レベルは8まで上がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る