第4話 溺れていたい
連日の記録的な猛暑のお陰で、すっかり私達は冷房のお世話になっていた。
そういえば、よく公園に行けば焼けるような日差しの下で子ども達が遊んでいたが、それももう昔の話になってしまった。近頃は、みんな部屋に籠ってオンラインゲームやネットサーフィンに夢中らしい。
部屋に籠ったまま夏を過ごすのはもったいない。その為、久しぶりに羽目を外して夏の風物詩を謳歌することにした。
♢ ♢ ♢
今回は、私の代わりに彼女に海水浴を楽しんでもらうことにする。私はそもそもインドア派なので、今回はパスだ。
彼女の為に、最高のビーチを作ってやらねばならない。
私は虫カゴの中を水で満たし、塩を溶けるだけ溶かした。
さあ、即席海水の完成だ。さっそく彼女を入れてみよう――と、思ったのだが私はここであるミスを犯していた。
――ある配信の回想。
『うーん。私は夏は外には出ないよぉ。暑いもんね。家でゆっくりしてるのがいちばん! え? 友達と遊ばないのかって? 確かに誘われたけど……私海行ったりするの苦手だし』
……そうだった。完全に忘れていた。
私は念の為、あらかじめ机の上で遊ばせていた彼女を塩水が入った虫カゴに近づけて見たが、今までにない程暴れだしてしまった。本当に苦手らしい。
これでは、夏を満喫することができない。しかし、そんな私にこの状況を打開するある名案がよぎった。
こうしちゃいられない。私はすぐさま、スーパーに言って抹茶ラテを数本購入した。そして、家に帰り一度作った塩水を全て洗い流した後、虫カゴを代わりに抹茶ラテで満たした。
そう。彼女――架星リブラは抹茶ラテが大好物なのだ。
いつか身体中の水分を抹茶ラテにしたい、と言っていた彼女のことだ。きっと喜んで海水浴。いや、抹茶浴を楽しんでくれるだろう。
私は部屋の隅で怯えていた彼女を捕まえて、服をすべて剥いだ。
股と控えめな胸を隠し、赤面する彼女を抹茶ラテの中に放り込み、観察してみた。
細い手足を必死にバタつかせて泳ごうとする彼女は、とても健気でかわいらしい。 もう少し見ていたい気もするが、私は友人からバーベキューのお誘いが来たので、家を出ることにした。たっぷり楽しんでね。
♢ ♢ ♢
バーベキューは盛り上がり、家に戻れたのは20時頃だった。
虫カゴを覗いて見ると、彼女の姿が見当たらない。その後、虫カゴの底に沈んでいたことが分かった。
身体中が緑色に染まり、ブヨブヨしている。彼女の言っていた通り、抹茶ラテに身体中を侵されたのだろう。願いが叶って良かったね。
さぁ、次はどうしようか?
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