怖そうで怖くない、だけど少し怖い実話怪談【カウベル】

手塚エマ

鳴ったよね?

 私の仕事場の出入り口はガラスの自動ドアです。

 大きなカウベルが引っかけてあるので、人の出入りがあれば必ず気がつく。

 来客であれば「こんにちは」などの声かけをスタッフが行います。

 今日、私が仕事をしていると、背後でカウベルのカランという音がしました。

 振り向いても誰もいません。

 自動ドアがゆっくり開き、ゆっくり閉じていくのを見守っただけ。


 しかも、来客には挨拶をする慣習のスタッフ全員がうんともすんとも言いません。

 カウベルが鳴ったにも関わらず。


 これは、おかしい。


 私はスタッフに、


「今、カウベルが鳴ったよね?」


 と、確認しました。けれども、はぁ?というような怪訝な顔をされました。

 誰もカウベルを聞いてはいないのです。

 そんなはずはありません。

 私は無人の自動ドア開閉を見て、カウベルの音もちゃんと聞いていたのです。


 「ここの自動ドア。たまにバズるからね」


 スタッフの一人がそう言いました。

 しかし、ドアがバズったとしてもカウベルが鳴るはず。それを誰も聞いていないというのはおかしな話。

 とりあえずバズったことにしてその場を収めましたが、腑に落ちない。

 

 私の母方が霊媒体質で、私もちょくちょく説明のつかない体験をしています。

 でも、私は見ることはありません。今回のように音や話し声を聞くことが多いです。カウベルの音と一緒にドアの開閉を見たのは、かなりレアかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怖そうで怖くない、だけど少し怖い実話怪談【カウベル】 手塚エマ @ravissante

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ