第10話 牧歌的な草原の物騒な一行③
しかし、クルトの反応は思いもよらぬ、私にとっては面倒なものだった。
「あなたの中で俺はまだ隣国のマフェアの「クルセイド」ではなく、あなたの専属使用人の「クルト」のままなんですか?」
……すごい返答しにくい事を聞いてくるな。
「そういう変な勘繰りはしないで。昨日までクルトと呼んでいたのにクルセイドとか急に呼ぶのはやりにくいだけだから」
「サーシャ嬢の言う事も最もですね。クルセイドよりもクルトの方が断然呼びやすいですし。クルセイド様は本当に一々下衆の勘繰りをするのがお好きで困りますわぁ」
「そうよそうよ」
私はオズさんの言い分に乗っかって援護射撃をする。
オズさんは必ずしも私の味方になってくれる訳ではなさそうだが、こうしてたまに助け船を出してくれる。クルトに下っ端と言われつつもクルトに対して強気に出ても咎められないし、何というか不思議な人だ。
本当はどういう立場の人なんだろう。
「この付近の町でリンナと合流する約束もしておりますから、そろそろ休めますよ、お嬢様。少々お疲れのようですから、ゆっくりベッドのある所でお休みになられた方がいいです」
クルトがどう思ったのかは分からないが、どうにか話を切り替えてくれた。
良かった、話題が流れたと私は安心していたのだが、オズさんは胡乱な眼差しでクルトを見て言った。
「……露骨に話題をそらしてきますねぇ」
……せっかくこの話が上手い具合に流れそうになっているのだから、そういう余計な事は言わないでいいのに……。
さっきはオズさんが救世主に見えたが、今はほんの少し憎らしく思えてしまう。
クルトは涼し気な顔で言った。
「ただ単に、こういう類の話は変に茶化してくるオズのいる前ではしない方が良いなと思っただけですよ。お嬢様と密に話したい時は、やはり二人きりの時の方が良い」
「……なるべくクルトと二人にならないようにするわ」
私はそうとしか言いようがなかった。
クルトの言う事は深く考えないようにしよう。
そういえばいつの間にか話が流れていて、話したいと言っていたクルトの組織内での立場とやらについて全然聞けていないけど、良いのだろうか。
まぁ拠点につくまでに聞けていればいい話なのだろうか。
……私から進んで問いただしたい話でもないので、そこについて敢えて聞く事はしなかった。
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