第13話 克服
「えっ、学校にですか?」
「そうです。そろそろ美咲ちゃんも、もう不登校は克服出来るんじゃないか?と思うんですよ」
僕は、美穂さんに美咲ちゃんの中学登校について提案してみた。
「でも、美咲の不登校の原因って結構なきっかけだったから、そう簡単には克服出来ると思えないけれど………」
美穂さんは、美咲ちゃんの登校にはかなり慎重だった。そもそも、何故美咲ちゃんが不登校になったのか?それを美穂さんに訊くと、美穂さんは当時美咲ちゃんの中学で起きた忌々しい出来事について語り始めた。
「当時、美咲はクラスでもかなり人気者で存在感のある娘だったの………」
よく分かる気がする。美咲ちゃんは、アイドル顔負けのカワイイ女の子だ。あれ程の娘ならば、クラスで人気者にならない筈が無い事は容易に想像がつく。
「けれども、クラスの中にはそれを面白く思わない娘がいてね、結局美咲はその娘を中心とするグループから陰湿ないじめを毎日受けるようになってしまって………それがきっかけで、美咲は学校へ行けなくなってしまったの」
酷い話だ。そんなものは、そのいじめた相手の単なる嫉妬じゃないか!そんなくだらないモノの為に、一人の少女の将来がメチャクチャになろうとしているなんて!
「私はね、美咲の高校進学がチャンスだと思っているのよ。高校にいけば、美咲をいじめていた連中とも離れられるし、美咲もまたやり直せるんじゃないか?って、だから勉強だけは遅れないように伊東君に家庭教師をお願いしているの」
「分かりますけど、高校進学まであと一年以上もあるじゃないですか!美咲ちゃんのその貴重な一年を、今のまま不登校でいさせていいんですか!」
中学時代の一年は、きっと大人になってからの一年とは比べ物にならない位貴重な筈なんだ。それを、いじめなんかの為に棒に振るなんて、僕にはとても堪えられない。
僕は、美穂さんにこんな提案をした。
「それなら、美咲ちゃんに決断してもらいましょう!」
「美咲に?」
「そうです!これは美咲ちゃんの人生です。ならば、彼女の将来を左右するかもしれないこの決断は美咲ちゃん本人がするべきです!」
「でも、こんな大事な事を美咲に決められるかしら………」
「美穂さん、もっと美咲ちゃんを信じてあげて下さい!こんな大事な事だからこそ、本人にしか決められないんです!」
提案というより、殆んど懇願に近かった。何故僕は美咲ちゃんの将来にそれ程拘るのか…………それは自分でも分からなかったが、この事に関してはもうこれ以上一歩も譲る事は出来ない………そんな気がした。
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