第5話 異世界転生の確率

『は〜い☆異世界を見て来た男、【イッセー中村】のみんなが知りたい異世界の掟―――っ!という訳でね、これから僕【イッセー中村】が実際に異世界へ行って仕入れてきた嘘のような本当の情報を皆さんに伝えていきたいと思いますのでね。興味を持っていただけたら、是非ともチャンネル登録を………』


何だか、ずいぶんと軽そうなヤツが異世界について語り始めた………異世界だからイッセー中村って、どんなネーミングセンスしてるんだコイツは………でも内容に関しては確かに興味がある。チャンネル登録はしないけれど………


『まず最初に、って、みんな思ってない? 実はこれが間違いって話!人が死んだ時に異世界転生するのは、厳密には全体の1/3………残りの2/3は転生出来なくてそこで終わりという訳!それと、異世界転生した場合、現世の記憶は消えてしまうから異世界転生して◯◯しようなんて計画を立てても無意味って事!』


「それホントかよ!?」


「どうした?遥人」


「いや……なぁ、このYouTubeのやつホントの話か?」


「う〜ん……まぁ都市伝説だからな〜信じる、信じないは…………」


「アナタ次第なんだろ? だけどさ、異世界転生出来るのが1/3ってのはちょっと酷すぎないか?」


まさか、異世界転生出来る確率が半分以下なんて………それじゃ詩織が無事に異世界転生出来た確率も1/3って事か?


「遥人、そんな最初の方でいちいち怒ってたらその続きは冷静に観てられないぞ?」


あらかじめYouTubeを観ている牧村は、警告じみた言葉を僕に投げ掛けた。


「観てられないって、どういう意味だよ?」



『はい、1/3の人がめでたく異世界転生出来ました〜。けれど、そこで安心するのはまだ早い! 何故なら、転生先が人間とは限らないからだ! 異世界転生の中で転生先が人間になる確率はおよそ1/4! あとは他の生物に転生します。それが哺乳類ならまだ恩の字、ヘビとかカエルとか、昆虫だったりミミズに転生する事もあるんだよね………』


「なんだって! 黙って聞いてりゃ、ふざけるなよこの野郎!」


「だから言ったろ! おい、遥人! いちいち大声出すなよ。他のお客さんに迷惑だろ」


「だってコイツ、詩織がミミズとか絶対ありえね〜だろっ!」


まるで、映像が頭に浮かぶようだ。そんなの、マジにムリッ!


「誰もそんな事言って無いだろ!あくまで確率の話なんだから冷静になれよ」


確率かぁ………最初の転生の権利を得るのに1/3で、次に人間に転生するのに1/4って事は、合わせて1/12か………そんなに【狭き門】なのか……異世界転生って。


YouTubeはそこで終わり、その後一時間くらい牧村と飲んでから僕らは居酒屋を出て解散した。


家に帰る迄の間、僕の頭の中ではあのYouTubeのイッセー中村が語っていた色々な内容がぐるぐるといつまでも回っていた………



          *     *    *



 翌日の日曜日、朝は遅めに起床して朝食を摂った。


その後、自分の部屋で昨夜のYouTubeの内容について改めて色々と考えてみた………


一番気にかかったのが、人間が亡くなって人間に異世界転生する確率。


(転生出来る確率)1/3×(それが人間である確率)1/4=1/12


十二分の一って、ちょっと厳し過ぎない?


これがどれだけ厳しいものなのかを実際に検証する為に、僕は部屋にトランプを持って来ると、その中からダイヤのカードだけを取り出した。そして、十三枚のカードからK(キング)を抜き、十二枚のカードをよく切った。


十二分の一だから、例えばこの中からエースを引く確率だとすると………


試しに一枚引いてみると、カードはエースじゃ無く【6】だった。


「やっぱ一発目はムリだよな〜」


そして、【6】を戻して再びカードを切る。


「さて、二回目!」


【10】


三回目………


【9】


四回目!


【6】


五回目!


【3】


何回引けばエースが出るんだっ!


【2】「……………」


「じゃあ七回目って……そんなに何回も死んでいられるかっ!」


七回引いて一度も当たらないなんて……人間に異世界転生するって、そんなに大変なのか?


あのYouTube観たら何だか不安になってきた………詩織………お前は無事に人間に転生出来てるのか?……………


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