A-side 2-4
「興味を持ってくれて嬉しいよ、和音は僕の研究に全く知的好奇心が湧かないらしくて淋しいからね。時間ができたらこちらから連絡させてもらうよ」
元居た講義室に戻ると和音はクラスメイトと談笑していたが、更紗の姿を認めるなり彼らから離れ、定位置となっている席へ戻った。
「別に無理しなくとも私のことは放っておいて貰って構わないのに」
更紗自身も定位置に座りながら、ぽそりと呟く。
「だってお前、俺が居なかったら直ぐに楓と話すだろ」
「何、ヤキモチなの」
「馬鹿言うなよ」
盛大な溜め息で、和音が話題を強制終了する。
「それよりも問題は父さんだ。検査官になっていたなら一言くれても良かったじゃないか」
苦虫を噛み潰したような表情とは正にこのことか、という実例を見た。
「それは無理な話だよ。シナプス検査は極秘事項だもの。家族にだって話せないよ」
「まぁそうなんだけど。この件に限らず、父さんは隠し事が多いんだよ。いっつも研究室に籠もって何か色々と実験しているし」
一要は政府機関の研究員をしているから、話したくても話せないことが多いのは仕方のないことだ。それでも、と更紗は思う。
「もっと和音が歩み寄れば、教えてくれることも多いと思うよ」
現に更紗は、一要の研究の内容や彼の掲げる理想を部分的にではあるが聞き知っていた。それらは更紗の探究心を満たし、彼女の思考の一角を形作っている。和音とも共有することができたら、更紗自身も、そして父である一要にとっても喜ばしいことだろう。
「和音パパの都合がつくときに、今度は和音も一緒にお話しようよ」
「悪い、俺はパスさせてもらうよ。どうしても父さんとは考え方が合わないんだ。人としては研究熱心で尊敬しているけど、思想に関して不必要に議論しない方がお互いのためだよ」
残念だと落胆し掛けたが、代わりに楓がついて行くと進言してきたので、更紗は直ぐに機嫌を取り戻した。
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