第22話不死身

「ボヒゥー」

イダは口から手のひらに煙を吐き、巨大な斧の形に模って固める。そのまま体育館の壁に斧を振り翳し、破壊する。


EP22 不死身


街の中を駆ける平井を多量の車達が包囲しようとするが、平井は左手と足だけでいなしていく。

「藤田が言ってた会社ってのはどこ?今の状況でそこに行けば助かる?」

「…………」

藤田は触手を2本のばし、バツ印を作る。

「ばつ……じゃあ今からアイツを殺した方がいい?」

「………」

藤田からの反応はない。

「……………」

平井は路地裏に逃げ込み、藤田を投げ捨てる。見つかれば警察に殺されるかもしれないが、戦いに邪魔なので仕方ない。

近づいてくるイダの影を睨み、平井は戦闘体制をとる。


「グウハハハワハハ!!!!!!!」

辺りが水色の煙に包まれ、イダが姿を現した。

「この身体の強みは強靭な肉体だけじゃない。体内を流れ、骨組みを作るこの物質もある。面白いぞこの身体は形に過ぎない」

イダの言葉を聞いて、平井は少し喜ぶ。藤田が言っていた、私が不死身ということはこの説明からして間違いないらしい。不死は私だけが持つ能力で、イダは私が殺してきた化け物達となんらかわりはない殺せば死ぬ生物。なら、たとえイダが言うように力の使い方を知らなくても、コッチが有利な可能性もある。

「フゥー…」

平井は浅く息を吐く。

前の腕みたいに死ねば回復する。捨て身で戦ってみる価値はある。生き返れる保証はないし、痛いだろうけど、こうしなければ勝てない。なんとしてでもコイツを殺す。


「ヴァアアィゥアアアア!!!ンッッ!!」

イダは平井に殺意を向け、豪快に斧を振り回す。

平井はそれをかわしながらイダの巨体に近づいていく。後ろまでくると平井は高く飛び上がり、イダの体毛に捕まる。そのまま体毛をつたり頭の上に乗る。

「早ッッ!」

平井はまたイダの角を一本抜き取り、それを持ったまま地面に降りる。

「グ ゥ……」

「痛いか?脆いんだよな案外。お前のツノ」

平井はまた高く飛び上がり、角をイダの腹部に深く刺す。貫通はできなかったが、かなり傷をつけることができた。

平井は再び地面に戻り、イダと距離を取る。

「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!゛!゛ッ゛」

イダは悶えながら角を引き抜き、地面に落とす。腹に空いた傷からは何本かの太い管が見え、そこに水色の液体が流れている。イダの口からは水色の液体が溢れていて、それを必死に飲み込み体内に戻している。


「………」

このままやれば、出来る。体力の消耗だって、死ねば回復する。

平井は力を振り絞り、地面に落ちたイダの角を拾う。

イダは斧を平井に向かって投げつけ、口から溢れた液で先程のものより大きい斧を作る。

平井の顔面に斧の柄がぶつかったが、平井は発狂しながらイダの方に向かっていく。平井の硬い顔面にはヒビが入っており、そこからは血がぶくぶくと溢れている。

「死ねッ゛死ねッ!!」

平井はイダの膝窩部分に角を突き刺し、グッと力を入れて貫通させる。

イダは体勢を崩し、声にもならない声を上げながらその場に倒れ込む。

「ハァ…ハァ……ぁぁあ…」

平井はイダの腹部に空いた傷の前に移動し、傷の中に手を入れる。そのまま管を掴み、引っ張る。

イダは無言で痙攣している。

「な゛んだ……。クソ雑魚じゃねえかよ。能力とか機能とかグダグダ抜かすわりに全然いかせてない。クク…ギャガヤアハハハハッハアハハアハ!!」

平井は管を何本かイダの体外に出し、噛みついて穴を開ける。

「うーん……」

平井はイダが動けないことを確認すると、藤田の元に向かおうとする。


「……待てよ…。」

イダが変身を解き、声を振り絞って平井に話かける。平井はイダの声を無視し、足を進める。

「待てて……相打ちだ。俺は死ぬかもしれないけどお前を殺すこともできる……。俺は観測できないけど結果はアイツが知れる……」

平井は走る。

「死ねッ!」

イダは一瞬で2本、極太の肉を延ばして平井の下半身を遠くに飛ばす。

「え?…」

平井は現状を確認した瞬間、不死に希望を寄せる。

絶対に再生できる。生き返れる。痛みを感じる前に、死にたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る