第19話武器身

壱ノ瀬茅はタクシーを降り、薄暗い喫茶店に入る。

「お疲れ、新井久しぶり」

隅のテーブル席を一人で贅沢に使う男の前に、壱ノ瀬は座る。テーブルの上には数多のケーキやアイス、コーヒーが並んでいる。

「久しぶり!平井澪はどうだった?なんともなかった?」

新井はスマホの電源を切る。

「思ったより可愛かった」

「ん?」

「なんか全然イメージと違くてさ、めっちゃ楽しかった!」

「マジか…」

「短い間…一ヶ月くらいかな。だったけどめっちゃ仲良くなった!」

「へー。良い子なの」

「うん、めっちゃ良い子。一緒に映画いっぱい見た」

壱ノ瀬はそう言いながらテーブルの上の食べ物に視線を移す。

「……どれに入れた?。一ヶ月やってなかったからさ。我慢出来ない。もう」

壱ノ瀬の額から汗が噴き出る。

それをみて、新井は鼻で笑う。

「イチゴが上に乗ったケーキとチョコのアイス、それと抹茶のアイスに入ってる」

「はぁ……抹茶には入れんなって言ったよな。私抹茶苦手なんだよ」

「ごめん。コレはわざと。ちょっと取っておきたい」

「だめ、全部私が食うよ」

壱ノ瀬は手を震わせながらケーキとアイス二つを自分の前に寄せた。

「中毒だな」

「金は後で払うから」

「オッケー」

壱ノ瀬はイチゴのケーキに齧り付く。


EP19 武器身


数日前


イダが提案した化け物を増やす計画に許可が出た。また実行するにあたって、一度化け物を作って殺害し、平井が特別な個体だということも確認された。

「今日はお集まりいただきありがとうございます。東岡です、よろしくお願いします」

肉塊の前に、複数の人間が集められる。

「これから皆さんは人ではなくなります。怪物の力を手に入れ、我々の指示に従い戦ってもらいます。指示に逆らった場合、先程あなた達の頭に埋め込んだ爆弾のスイッチを発動させます」

数秒間、沈黙が流れる。

「まず、藤田承を殺害してもらいます。」


…………………………………。


数日後


平井は目を覚ました。

「ぅ………」

水槽に入れられたコンクリートは完全に固まり、平井は身動きが取れなくなっていた。

平井は首を動かして自由を確認した後、無力感に襲われて俯く。

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